日本の学校、WHOのセーフスクール取得へ

【こども】
 ■安全な教育環境づくりを推進
 安全な教育環境づくりを進めている学校を認証する世界保健機関(WHO)の「WHOインターナショナルセーフスクール(ISS)」取得に、日本の学校が取り組み始めている。既に大阪教育大付属池田小学校が認証を受け、神奈川県厚木市の市立清水小学校も11月の認証取得を目指す。ISS取得という明確な目標があることで、児童の安全に対する意識も向上しているという。(森本昌彦)
 ◆危険場所を可視化
 「WHOが認めてくれる世界的な認証を取ることができれば、子供たちの誇りをつくることができます」。ISSの認証取得を目指す目的の一つについて、清水小の志佐(しさ)光正校長はこう語る。
 厚木市も今年11月、WHOの「セーフコミュニティ(SC)」の認証を取得予定。市全体で事故や犯罪の予防に取り組み、清水小の保護者や自治会でつくる「しみずっ子すこやかネットワーク会議」が昨年、SCのモデル地区に指定されている。モデル地区としての活動を通じ、ISSの存在を知り、認証取得を目指すこととなった。
 清水小がまず目指したのは、校内でのけがの減少。平成20年度に5636件も発生しており、対策の一つとして保健室の前に学校の平面図を掲示。児童自らがけがをした場所にシールを張り、けがをしやすい場所が一目で分かるようにした。
 ◆教員や保護者も
 この結果、21年度のけがは4734件と約900件減少した。クラスや委員会ごとに学校内の安全対策について話し合ったことで児童の意識が向上。気が付いた危険個所の改善を学校側に求め、対策が取られたケースもあったという。
 けがだけでなく、命の大切さを訴えたり、バランスの取れた食事を呼びかけたりと、さまざまな活動を児童自らが実施。学校職員や保護者、地域も取り組みに協力している。
 例えば、PTAは自転車用ヘルメットの着用率を向上させるため、保護者に購入・着用を呼びかける。学校は、授業で命を大切にする心を養うなどのカリキュラムを取り入れている。PTA会長の田口孝男さんは「子供たちが活動に取り組むことによって、病気、けがに対する意識が高まることを期待している」と話す。
 国内では大阪教育大付属池田小が今年3月にISS認証を取得しており、清水小が認証を受ければ国内2番目となる。今後の活動について、志佐校長は「認証を一つのステップとして、ISSの取り組みを校外にも積極的に伝えていきたい」と話しており、今後徐々にISSの存在が広がっていきそうだ。
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【用語解説】WHOインターナショナル
 セーフスクール(ISS)安全な学校環境づくりに取り組んでいる学校に与えられる世界保健機関(WHO)による国際認証。2003年にスウェーデンの小学校が認証を受けたのが初めてで、これまでに世界で30を超える学校が認証を取得している。認証の指標として、学校政策(安全計画、目標)の設定▽弱者を対象としたプログラム▽(事故などの)発生の頻度と原因を記録するプログラム▽継続的なネットワークへの参加-などが挙げられている。一度認証を取得しても3年ごとに更新する必要があり、組織的かつ継続的な活動が重視される。

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