日本の“購買力”は「57ヵ国中33位」…「低所得・低物価・低金利・低成長」に苦しむこの国の「厳しすぎる現実」

「低所得・低物価・低金利・低成長」の「4低」が「ふつう」になった日本。かつて世界2位の経済大国だった「高い日本」がなぜこんな「安い日本」になってしまったのか。 気鋭のエコノミスト永濱利廣氏は著書『日本病――なぜ給料と物価は安いままなのか』で、この「4低」状況を「日本病」と名付け、その原因と、脱却するための道筋を考察する。 今、日本はどのくらい「安い」のか。『日本病――なぜ給料と物価は安いままなのか』から見てみよう。 ———- 【図表を見る】日本の「購買力」はこんなに低い…

日本の国力は30年以上下がり続けている

 日本経済はバブル崩壊以降30年、ほとんど成長していません。  「好景気」とは何であったか忘れるほど、あるいは「経済成長」も「オイルショック」も教科書でしか知らない世代が30代になるくらい、日本はずっとデフレのなかにありました。  「低所得・低物価・低金利・低成長」の「4低」は、もはや「ふつう」になりつつあります。  最近では『安いニッポン――「価格」が示す停滞』(中藤玲著、日経プレミアシリーズ)という本がベストセラーになるなど、「高い日本」というイメージはもはや過去のものであることが周知されてきました。いまや「タイやフィリピンより安い」とさえ言われています。  確かに、経営幹部の給与を比較すると、日本は主要国のなかで下から数えたほうが早くなっています。  中国対比で約3割安、韓国対比で約2割安で、フィリピン、インドネシア、タイより低い水準です(マーサー ジャパンの調査による)。日本の賃金は非管理職レベルではそれほど安くないのですが、課長レベルで韓国に肩を並べられ、部長レベルでは中国に逆転されているのです。  海外旅行に行っても、「安い!」より「高い!」と感じることのほうが多くなりました。  「マイナス金利」も、手数料のほうが高いレベルの銀行の預金利子も、すでに我々の「当たり前」。多くの人が、「今日より明日のほうが厳しくなる」と考える、デフレマインドで生きています。  本書では、日本の絶望的に長期化した「4低」状況を、「日本病」と名付けました。  お察しのとおり、これは1960年代から1980年代にかけて、長期にわたり社会・経済が停滞したイギリスの状況、いわゆる「英国病」になぞらえたものです。  海外との比較、そして日本に独特な事情も検討しながら、この「病」をいろいろな角度から分析し、現状を招いた原因と、ここから脱却するための道筋を考察します。

「ビッグマック」の価格で見る日本の購買力

写真:現代ビジネス

 では、実際のところ日本はどの程度「安い」のか、具体的なモノで見ていきましょう。  世界中のマクドナルドで売られている「ビッグマック」の価格を比較した、有名な「ビッグマック指数」という指標があります。これは、イギリスの経済誌「エコノミスト」が毎年2回発表していて、世界共通で売られているハンバーガーの価格を比較することで、各国の購買力を比較しようというものです(図表1-1)。  2022年1月版を見ると、日本は389円(3.38ドル)で57ヵ国中33位です。韓国は440円(3.82ドル)で27位、中国は441円(3.83ドル)で26位、タイは442円(3.84ドル)で25位と、すでにタイ、中国、韓国よりも安いことがわかります。  上位を見てみると、3位のアメリカは669円(5.81ドル)、2位のノルウェーは736円(6.39ドル)、首位のスイスは804円(6.98ドル)と、日本とは2倍を超える差がありました。  このほか、カナダは613円(5.32ドル)で7位、イギリスは555円(4.82ドル)で10位。日本と同じ389円(3.38ドル)だったのはグアテマラで、前後は、32位がポーランド396円(3.44ドル)、35位がペルー387円(3.36ドル)となっています。  このあたりは、私たちがそれぞれの国へ海外旅行に行ったときの物価の実感と近いのではないでしょうか。  *  さらに詳しい日本経済の状況については、【つづき】「日本の給料は「先進国で最下位争いをするレベル」…日本経済をドン底に突き落としたものの「正体」」でお伝えしよう。

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