3月25日、日米韓首脳による三者会談がオランダ・ハーグにて行われた。安倍首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、ともに、政権の座に就いてからすでに1年以上が経っている。オバマ大統領のお膳立てで、今回ようやく初会談が実現した。
ブルームバーグの論説は、その様子を、学校で喧嘩をして校長室に呼ばれ、仲直りを強いられているようだった、と語る。フィナンシャル・タイムズ紙の論説も、オバマ大統領が両首脳のあいだに座っていたのは、さながら2人が喧嘩するのを防ぐためのようだった、と述べる。
会談は具体的な成果に乏しかった。とはいえ、これを機に、冷え込んだ日韓関係の改善を期待する論説・コラムが、海外メディアに相次いで掲載されている。各記事は、日韓関係がこじれた原因を診断し、その処方を示している。
【1.両国首脳の大人げないふるまいが原因】
フィナンシャル・タイムズ紙は社説で、日韓両首脳とも、大人げないふるまいをしている、と語る。安倍首相については靖国参拝を挙げた。朴大統領については、伊藤博文暗殺犯である安重根の記念像を建てるよう、中国政府に求めたのは余計なことだった、としている。
また、アメリカで慰安婦像が建造されるたびに、「日本は自分たちの見解を主張するため、熱心な代表団を送り込んでいるが、日本政府がこの件で共感を得ることは決してないだろう」と、あたかも政府が主導しているように述べている。「たとえ歴史がねつ造されていると思っているとしても、黙ってこらえる時と知るべきだ」と諭す。
両国の首脳は、論議を呼ぶ問題について、火に油を注ぐのではなく、冷却させる責任がある、と述べる。
【2.日韓それぞれの国民意識が原因】
クリスチャン・サイエンス・モニターのコラムは、日本と韓国それぞれの国民意識に、根本原因があると見ている。
韓国は「過去60年のあいだ、目覚ましい近代化と民主化を遂げたにもかかわらず、日本に植民地支配された40年間が、自国のことを思うにあたっての中心的問題であり続けている」と指摘する。
日本については、第2次世界大戦で負けたことと、原子爆弾を投下されたことから、「自分たちは戦争の被害者だという固定観念を持っている」と言う。戦時中の非道な行為については戦後、清算したのに、それが正当に評価されていないと思っている。自分たち自身、侵略者だったという意識を持つことは、日本人には難しい、と述べている。
このように、お互いに対立する国民意識を持ち続けているかぎり、政治的な解決策は失敗し続けるだろう、と主張する。これを解決するためには、国民一人一人のレベルでの感情の和解が必要だ。そのために、韓国は、日本が何をどうすれば、真の反省の表現として受け入れるつもりなのかを、はっきりと決めなくてはならないだろう(記事は個人レベルでの補償をほのめかしている)。そして日本には、この要求に十全に応える勇気が必要だろう、と韓国の主張を言い値で受け入れる形での和解を提案している。
【3.余計なおしゃべりが原因】
日本にとって、はるかに受け入れやすく、実行も容易な方策を、ブルームバーグの論説が提案している。それは、首相はじめ、政府筋の関係者が、歴史問題について一切口をつぐむ、という案だ。
安倍政権は、戦時中の植民地支配と慰安婦問題について、自分たちに都合の悪いことを糊塗しようと試みて、韓国を激怒させてきた、と記事は述べる。過去を美化したい、軍事力を憲法の枷から自由にしたい、という政権の強迫観念に釣られて、過去の過ちを反省しないナショナリストたちが表に現れてきている。政府要人のあいだにも、一部そういった風潮があり、その発言が問題視されている、という。
そこで、たとえば1990年より前のことについては、発言を求められても答えずに、未来志向だけをアピールすると良い、と述べている。もちろん、これですべてが解決するわけではないが、第1のステップにはなるだろう。なので、自民党議員にも、2020年東京オリンピックの準備委員会にも、NHKのお偉方にも、口を慎むように安倍首相は言うべきだ、と記事は語る。
【4.ナショナリズムに迎合するメディアも原因】
フィナンシャル・タイムズ紙は、韓国のマスメディアは、ナショナリストの意見の、いちばん低劣なところに迎合しているそぶりがある、と述べる。また、日本でも次第にそうなってきている、と指摘する。報道機関は、出来事のもっと細かな陰影を伝えるよう、一層心がけなくてはならない、と主張する。