2020年の東京五輪開催に続き、2025年には大阪万博の開催が決定した。明るいニュースの一方で、昨今、日本の将来に暗い影を及ぼす「2025年問題」への懸念が高まっているのをご存じだろうか。今回は、日本の命運を決する「2025年問題」について見ていこう。
■2025年に社会保障費は約149兆円へ、現役世代の負担重く
平成30年版の「高齢社会白書」によると、日本の総人口は2017年10月1日時点で1億2,671万人。高齢化は年々加速しており、65歳以上人口は3,515万人、総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は27.7%に達した。問題となっている2025年には、人口のボリュームゾーンである団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、高齢化問題がいよいよ抜き差しならない状況になる。
まず、懸念されるのは医療の問題だ。身体機能の衰えに伴い、高齢者は医療や介護サービスに頼るようになり、公的医療保険や介護保険の利用も増える。こうした流れを受けて、社会保障全体の費用が膨らむ見通しだ。2025年の年金や子育て向けの支出も含めた社会保障費全体は、2015年と比較して20%増の148兆9,000億円に上ると推計されている。
少子高齢化で福祉の担い手となる現役世代が減少する中で、高齢者は増加する。現役世代への社会保障負担はますます重くなるだろう。
(参照:内閣府「公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較」)
■2025年の空き家率は20%台へ
核家族化に伴い、高齢者の1人暮らしや夫婦のみの世帯の増加も社会現象となっている。平成30年版「高齢社会白書」によると、2016年時点ですでに夫婦のみの世帯が約3割を占めており、単独世帯と合わせると半数を超える状況だ。今後、高齢化に伴って配偶者と死別し、独居となる高齢者世帯が増加すると考えられる。
高齢化に伴い、懸念されているのが空き家の増加だ。野村総合研究所の調査によると、2018年時点での空き家率は16.9%だが、2023年にはこれが21.0%に上昇し、2028年には25.5%に達する。人口減に伴い新規住宅着工数も減少する見通しだが、それをさらに上回るスピードで世帯数が減っていく。また、親族の死亡により相続が大量発生するものの、過疎地や生活に不便なエリアの住宅は利用価値が低く、空き家として放置されるものも増えるだろう。
空き家が増えると景観や地域の治安を損なうほか、自然災害の発生時に所有者がはっきりしない空き家の取り扱いをどうするかという問題も発生する可能性があるのだ。
(参照:野村総合研究所「住宅の除却・減築などが進まない場合、2033年には空き家が2,000万戸超へと倍増」)
■ロスジェネ世代の子供たち、「一家共倒れ」の懸念も
さらに、不安をかき立てるのは、団塊世代の親を支えるべき子供たちの世代の不安定さだ。団塊世代の子供たちは、人口のボリュームゾーンながら、いわゆる「ロスジェネ」といわれる就職氷河期世代にあたる。バブル崩壊後の失われた30年の中で、能力にかかわらず正規の仕事が見つからず、働き盛りの時代に非正規の仕事を転々としながら糊口をしのいできたという人も多い。
仕事の不安定さから結婚せず、独身を通す人もいる。ロスジェネ世代もすでに40代半ば。2025年には彼らも50代にさしかかり、自らの老いや病と立ち向かわねばならなくなる。不安定な職業で日々の暮らしに追われる彼らに両親の介護や病、加えて自身の老いや病といった困難が降りかかってきた場合、一家共倒れになるケースも出てくるだろう。
経済的自立ができずに実家で両親と暮らし、一家の生計を両親の年金に頼っている場合はさらに深刻だ。両親が他界すれば、年金に頼ることはできなくなる。うまく生活保護などの福祉の手がさしのべられれば良いが、社会保障負担が増大する中で、公的支援もだんだんと厳しさを増すだろう。こうした層が生活の困窮から自暴自棄に陥り、社会の治安が悪化する懸念は多いにある。
■この6年で日本の命運が決まる
日本では諸外国に例を見ないスピードで高齢化が加速している。アジアでは、中国やシンガポール、タイのように高齢化社会の到来が懸念されている国もあるが、有効な対策を打たないまま超高齢化社会を迎える日本は、彼らにとって反面教師だ。2019年から2025年まで、あとたった6年。この6年間で日本の命運が決まるといっても過言ではないかもしれない。