世の中にあふれる様々な統計やデータ。これをもとにして色々なランキングが作られるワケだが、中にはなぜそうなるのかの理由が、すぐにはわからないような”世にも不思議なランキング”がある。
TBSテレビ『世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』(次回は4月27日よる8時放送)は、そんなランキングデータの謎を解き明かす番組だ。「なんで△△が○位にランクインしているのか?」。その裏側を探ると、驚きの事実が次々に明らかになってくる。
北陸新幹線の開通により、最速2時間8分で結ばれた東京-富山間。宿泊費や飲食費を含めた富山の経済効果は約88億円にも上るという試算もある。
そんな富山にまつわる面白いデータがある。まずは、下のランキングをご覧いただきたい。
■消費支出が多い都市のランキング
1位 富山市 33万9622円
2位 金沢市 33万5861円
3位 さいたま市 32万9448円
4位 宇都宮市 32万9193円
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55位 東京都 32万4999円
(2人以上の世帯の1カ月当たり金額、2014年、総務省統計局『家計調査』)
このデータが発表されたのは、北陸新幹線の開通より1年近く前。富山市民に何か特別な経済効果がもたらされたタイミングではない。むしろ堅実なイメージがあるのに、元来、富山の人は全国でもっともお金遣いが荒いということになるのだ。
いったいなんで? 取材班は早速、富山市に飛んだ。
最初に調べたのは、有名な「富山の薬売り」。
各地を回っておカネを儲けているはず!
ということで市内の薬屋さんに話を聞くと、「儲けてはいない」という答えが返ってきた。
ただ、富山市民の収入は多い。
■収入が多い都市ランキング
1位 宇都宮市 65万2121円
2位 富山市 63万9091円
3位 金沢市 61万3534円
4位 福島市 60万6705円
5位 島根市 59万5574円
(2人以上の世帯の1カ月当たり金額、2014年、総務省統計局家計調査)
そして、お小遣いが充実している。
■小遣いの多い都市ランキング
1位 富山市 29万3056円
2位 高松市 25万7954円
3位 高知市 24万3500円
4位 福井市 21万3205円
5位 鹿児島市 18万7065円
(2人以上の世帯の1カ月当たり金額、2014年、総務省統計局家計調査)
本当なのだろうか。町ゆくお父さんの財布の中身を見せてもらうことにした。取材に快く応じてもらった人の財布の中身を見て、びっくり。みなさん普通に3万円以上は持っていて、中には15万円を超える人もいた。
では、たくさんおカネを持っている富山の人はいったい何に使っているのか? 取材班は、富山が全国1位の興味深いランキングを発見した。
■持ち家住宅率
1位 富山県 79.4%
2位 秋田県 78.1%
3位 山形県 76.7%
4位 福井県 76.5%
5位 新潟県 75.5%
(2013年総務省統計局『住宅・土地統計調査』)
実際に富山の住宅街を回ってみると、戸建て住宅が多いばかりか大きな家だらけ!
とにかく豪邸!豪邸!マジで豪邸!庭には灯篭やなぜか銅像まで。そんな豪邸が建ち並ぶ。
取材に応じてくれた人の家には、金箔が施された仏壇があったり、先代から残る神輿までもが所狭しと置いてあったりした。
「家に神輿?」とピンと来ない人もいると思うが、祭りで活躍するあの神輿が本当に家の中に置いてあるのだ。ほかの家を取材すると、なぜかそこにも銅像。どうやら富山の人は銅像が好きなようだ。
さすがに神輿はなかったが、代わりに一枚ものの大理石が何枚も豪快に連なる、家を囲む門周りを発見。
その金額は、小さな家が買えるほどだという。
そんな豪邸ぞろいの富山市。その証拠に持ち家住宅の延べ面積は、これまた全国1位なのだ。
■家の面積 ※1住宅あたり延べ面積【平方メートル】
1位 富山県 152.18
2位 福井県 146.16
3位 山形県 141.51
4位 秋田県 138.61
5位 新潟県 134.93
(2013年総務省統計局『住宅・土地統計調査』)
富山の家がこんなにも大きいのには理由がある。それは、「昔から家を持って一人前」という考えが根付いているからだという。
取材をする中で、面白い県民性を耳にする。それは「富山の人は見栄っ張り」。だから家が大きいのか? だとしたら、富山の見栄っ張りは豪快だ。口々に言う 見栄っ張りエピソードの中で「富山の人は皆ルイヴィトンを持っている」という話を聞きつけた取材班は、早速近くのスーパーに。するとリアルに皆さんルイ ヴィトンの財布を持っている。
どうやら「見栄っ張り」という話は嘘ではなさそう。富山の県民性に詳しい先生に話を聞くと、「やはり富山の人はとにかく見栄っ張りで、そのため家も大きいとのこと。そして家が大きいと光熱費や水道代がかさみ、その維持費だけで消費支出が増えていくのだ」という。
ちなみに、豪邸の人の光熱費を見せてもらうとなんと1カ月分が約6万円だった!
見栄っ張りということは、もしかして!と墓地に行ってみた。するとやはりわが墓こそ!と競い合わんばかりに大きくて背の高いお墓が沢山並んでいた。「富山人は見栄っ張り」というのは、本当なのかもしれない。
とはいえ、それだけで富山は金遣いが荒いと言い切るのは乱暴すぎる。ほかに理由はないかと取材を続けると、新たな仮説が浮上。それは筆者の考えがひねくれていたと痛感する説、「富山が何より家族を大事にしている」ということだ。
まずは、国内旅行者の数が全国で1位だ。
■旅行・行楽の種類別行動者率 観光 国内旅行
1位 富山県 51.5%
2位 東京都 50.9%
3位 神奈川県 50.6%
3位 愛知県 50.6%
5位 埼玉県 50.5%
(2013年総務省統計局『社会生活基本調査』)
※調査した人数を県の人口に置きかえて算出
そして富山は、離婚率が全国で下から3番目に低い。
■離婚率
43位 山形県 1.47%
45位 島根県 1.44%
45位 富山県 1.44%
46位 秋田県 1.41%
47位 新潟県 1.38%
(2012年厚生労働省『人口動態統計』)
収入の多さにもつながる話だが、共働きの世帯割合も、富山は全国5位と高い。
■夫婦共働き世帯の割合
1位 福井県 58.8%
2位 山形県 57.4%
3位 石川県 55.0%
4位 島根県 54.7%
5位 富山県 53.9%
(2011年総務省『就業構造基本調査』)
そして見栄っ張りで紹介した、持ち家率が高いのも、冠婚葬祭におカネをかけるのも、実はすべて家族想いに繋がるものばかりであった。そう、「仏壇」や「お墓が大きい」のも「葬儀費用が高い」のも……先祖を大切にする、家族想いゆえだった。
富山の人は、家族の絆を大切にし、家族のためならおカネを惜しまない! 富山は「幸せなお父さん」をたくさん生み出す。そんな素敵な街だった