時代は、価格を安く抑えるコスパ重視の価値観から、効率性・利便性を追求するタイパ(タイムパフォーマンス)重視の社会にシフトしているという。だが、日本の現状は程遠い。時短術を極めたスペシャリストにその原因を聞いた。
◆事務作業大国ではDX推進が阻害される
米ソフトウエア大手・アドビが先進7か国を対象に行った調査によると、勤務時間のうち「雑務」にかける時間は日本が最長の35.5%だった。
1%は年間20時間に相当し、日本は一番短いニュージーランドの29.7%より概算で116時間も多い。労働生産性の低さの一因だ。
◆国民の時間や気力を奪う事務作業
だが、遅まきながら日本でも、多くの企業が「DX推進」に取り組んでいるのではなかったのか。早くから日本の労働の非効率を問題視してきた「組織変革Lab」主宰の沢渡あまね氏は、軽く一蹴する。
「DXの旗振り役の官公庁からも、いまだに確定申告や年末調整で膨大な紙書類の提出を求められ、国民の時間や気力を奪う一大行事になっている。
意欲ある起業家が上場しようとすると、登記、許認可・届け出手続き……など事務作業が莫大に増え、利益をまったく生み出さない“仕事ごっこ”に忙殺されてしまう。“事務作業大国ニッポン”とも呼ぶべき由々しき事態です」
◆改善が進まない原因は…
改善が進まないのは、日本特有の原因があるからだ。
「解雇規制が強すぎてクビを切れない社員に、企業は何もさせないわけにいかない。こうしてムダな事務作業が彼らの仕事となり、雑務は温存されている」
雑務が主業務のようになってしまった日本では、時短は不可能なのか……。
【組織変革Lab主宰 沢渡あまね氏】
組織開発専門家。あまねキャリアCEO。400以上の組織で改革を支援。著書に『新時代を生き抜く越境思考』(技術評論社)など
取材・文/池田 潮―[ムダ時間を消す[最強の(裏)時短術]]―