日本人が飼い猫につけたがる名前ランキング

なぜそうなるのかの理由が、すぐにはわからない。TBSテレビ『世に も不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』(次回は8月31日(月)よる8時放送)は、そんな不思議なランキングの謎を解き明かす番組だ。データの裏側を探ると、驚きの 事実が次々に明らかになってくる。

まずはこちらを見ていただきたい。ペットフード協会の調べによる、猫と犬の飼育数の推移だ。

昨年時点で、ペットとして飼われている猫の数が犬に迫っている。そう今は空前の猫ブームだ。可愛い猫たちの映像や画像をとりあげたインターネットの動画サイトは大人気。多くのスター猫が誕生している。

そんなペットとして飼われている猫の「名前」にまつわる2つの謎がある。このランキングをご覧いただきたい。

■ペットの猫に多い名前ランキング(2015年最新版)

1位 モモ
2位 ミルク
3位 ミー
4位 ソラ・ヒメ
5位 ミイ・リン

(出典:アイリスオーヤマ)

ひとつ目は1位の「モモ」にまつわる謎。ペット猫の名前で、モモはここ7年連続でトップを守っている。なぜここまで人気があるのだろうか。

取材班は、全国のモモの飼い主さん300人に調査した貴重な資料を入手した。そこに記されていた、「モモと名前をつけた理由」はまさに十人十色、千差万別だった。

「桃の節句の時期に拾ったから」

「響きが可愛いから」

「プロゴルファー上田桃子から」

などなのだが、その中に、興味深い記述を発見した。「コミック『きみはペット』の登場人物モモからいただきました」「『きみはペット』のモモのように大切な存在になると思って」などという回答だ。

『きみはペット』とは2000年代前半、当時の女子高生の間で絶大な人気を誇った少女漫画。講談社の「Kiss」での連載のほか、嵐の松本潤さん主演によりTBSでテレビドラマ化もされ人気を博した。

主人公のキャリアウーマンが段ボールに入って捨てられていた美少年を拾い、同居するというのが主なストーリーだ。

その主人公が美少年につけた名前がモモである。当時、この漫画に夢中になっていた女子中高生が大人になり、自分が飼う猫にモモと名付けているのでは、という推測ができる。

モモという名前が人気な理由は、もちろんそれだけでもないだろう。ほかには、こういう説がある。猫の名前を研究して25年以上という千葉市動物公園園長・石田さんが唱える「M系の法則」だ。

石田園長によると、ペット猫につける人気の名前には「M」で始まるものが多いという。「ミーとか、ミャーとか猫の鳴き声ってありますよね。鳴き声から連想 しているんだと思うんです」。なるほど!『M』とはミー! ミャー! など、鳴き声を文字にした時のM、つまり、日本語でいえば、「まみむめも」の『ま 行』で始まる名前が多いという。確かに、最新版のランキングを見ても、ベスト3はすべてマ行。5位もマ行だ。

第1の謎、ペット猫の名前でモモが7年連続トップの理由は、女子に人気だった漫画、ドラマの影響と猫の鳴き声から連想されるM系の法則の両方にありそうだ。

2つ目の謎は、あの名前がないことだ。猫の名前と聞いて真っ先に浮かぶはずの「たま(タマ)」。言わずと知れた国民的アニメ『サザエさん』の人気キャラク ターのひとつであり、今年6月に天国へ旅立った和歌山県・貴志駅(和歌山電鉄貴志川線)にいた「たま駅長」などを知っている人も多いだろう。

取材班が「猫の名前といえば?」という街頭インタビューをしてみたところ、なんと8割以上の人が「たま」と回答。日本人には、「猫=たま」という印象が強い。

サザエさんの「たま」のルーツも、もともとは江戸時代、招き猫発祥の寺、世田谷区豪徳寺にあるという。豪徳寺は通称「猫寺」と呼ばれ大小、さまざまな白い 招き猫が2000体以上もあり、全国の猫愛好家が集まる場所。この招き猫のモデルが、江戸時代にこのお寺で飼われていた猫であり、その名前が「たま」だっ たというのだ。

しかし、ペット猫で人気の名前ランキングでみると最新ベスト10の中に「たま」という名前はないどころか、実はここ8年間、「たま」は10位にすら入っていない。多くの人が、「猫=たま」という印象があるにもかかわらずだ。

深まる謎、取材班は、過去9年間のランキングを徹底検証してみた。すると、ある不思議な現象を発見することができた。最新の3年間を見てみよう。

人の子どもにつけるような名前が多い事がわかる。実際に人の名前と比べると……。

たとえば、リンちゃん、猫のランキングは4位。人のランキングは3位
などなど、猫と人で名前に差がなくなってきている。

今や猫は単なるペットではなく、家族の一員であり、人生を送るパートナーになった。ペットの象徴だった「たま」という名は、飼い主にとってわが子のような 存在となった今、そぐわなくなってしまったと考えられる。それに外国種の猫が増えたのも要因にありそうだ。いかにも和風な名前の「たま」は外国猫にはそぐ わない。

TBSテレビの『ナゾ解きマイネーム』取材班によると、日本人が子どもにつける名前も時代の変遷があり、現在30~50代の男性に多いのは「誠」だが、最近多いのは、「大翔」「翔太」など「翔」の名前がつく男の子だ。

名前は時代を映す鏡。猫をめぐるさまざまな出来事で、人気の名前もまた変わっていくだろう。「たま」の復権は難しいかもしれないものの、「モモ」の隆盛もいつまでも続かないはずだ。

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