ホテル関係者が内部告発
隣人である中国資本のホテルは「富士山がよく見えないから」として敷地内に不法侵入してきて、勝手に木を伐採してしまった。終の棲家を購入したはずだったが、まさかこんなことに……。
思わぬトラブルに巻き込まれた被害者の告発記事には大きな反響があった。あれから1ヵ月以上が経過し、ホテル側から誠意ある対応はあったのか。
前編記事『富士山を見るために「隣人宅に無断で侵入、ヒノキ23本を勝手に伐採」…!中国資本ホテルで起きた大騒動「驚きの結末」』に続き、事件のその後を紹介する――。
ホテル側の非常識な行動に憤るのは被害者である井上さん(仮名)だけではない。加害者側であるホテル側の関係者も同様だ。
被害者の井上さんに対して『オーナーのA本人がホテルの眺望をよくするために従業員らに命じてヒノキを伐採させたのを現地で確認した』と証言したX氏は、内部告発を決意した理由をこう明かす。
「2021年末から2022年1月にかけて枝が切り落とされたのがわかりました。薬剤に関しては、お隣の敷地内で何か作業をしているなと気づきましたが、まさか毒を入れているとは思いませんでした。
木を殺す行為に関しては、2022年5月あたりに葉っぱが赤茶けた色をしてきているのに気づきました。周りの木は緑なのに枝を切り落とした木だけ日々茶色に変色して異様な光景になっていました。『もしかして木に猛毒を入れたのでは』と思いましたが、のちに事実だったと知り、驚きと同時に恐怖を感じました。
周りの従業員も、オーナーらの行為に疑問を持っていました。しかし、誰もそれについて話すことはありませんでした」
日本人スタッフは相次ぎ退社
他人の家の木を勝手に切るのは、器物損壊罪であり、他人の住宅の敷地に入った場合は住居侵入罪であることは言うまでもない。
ビッグモーターの一連の事件では、景観を重視する本部上層部の指示により、店舗前の街路樹が伐採されていただけではなく、除草剤散布によって枯死したことが社会問題にまで発展。
今年1月末には「環境整備推進委員」という役職についていた社員が器物損壊の疑いで逮捕されている。
当然、ホテルの従業員は犯罪行為であることを認識していたが、それを話題にすることもできなかったという。X氏は続ける。
「従業員内ではかん口令が徹底されています。しかし、これが異常な状況であることは明らかです。自分は『いくらなんでもやりすぎだろう。このまま黙っていていいのか』と思いました。
告発すべきか悩んだのはたしかです。ただ、ホテルの仕事に従事する人間として悲しかったし、情けなかった。何も言わずに黙っていることは、この悪事に手を貸したことと同じだと思いました。そこで、ホテルによる犯罪の事実を井上さんに伝えることを決意しました」
X氏によれば、「日本人を中心に半分近くのスタッフがホテルを退社した」という。
改めて、Kホテル側に電話で問い合わせた。
責任逃れ
――隣人宅のヒノキを無断で切断した件について伺いたい。責任者をお願いできますか。
「すべて本社のほうで対応することになっています」
問い合わせに対し、上司に確認したうえで対応に当たった日本人女性は「本社が対応することになっている」と繰り返すばかりだ。
――以前取材した際、本社は電話してもつながらず、メールへの返答もありませんでした。対応していただける方はいませんか。
「本社にすべてお任せしていますので」
――オーナーのAさんはどちらにいますか。
「本社だと思いますけど」
――お隣の方は憔悴しています。(スタッフとして)思うところもあるのではないか。
「すみません」
日本人女性は申し訳なさそうに謝るばかりであった。一方、ホテルを運営するM社にも問い合わせたが、やはり電話はつながらず、メールへの回答もなかった。
幹部を直撃すると
記者は3月下旬に現地を訪れたが、アジアのみならず欧米の客もKホテルを訪れており、彼らは部屋のベランダから望遠レンズで富士山を撮影していた。
「Kホテルは他人の家の敷地内に無断駐車するなど以前からトラブル続きでした。実は木を勝手に切られたのは井上さんだけではありません。あそこのスタッフは雪かきを手伝わないし、インバウンドの客は外で騒ぐ。ほとほと迷惑しています」(近隣住民)
ホテルを訪れて取材を申し込むと、経営母体であるM社の取締役に名前を連ねていた中国人男性スタッフが現れた。
―井上さん宅のヒノキを無断で伐採し、除草剤を流し込んだ件について伺いたい。
「私は何も知りません。本社に聞いてください」
――本社は連絡がつながりません。Aさんはどこにいますか。
「どこにいるか知りません」
――あなたは本社の人間でもありますよね。
「私は何もわかりません」
何を聞いても男性は「わかりません」と繰り返すのみ。そして、記者をホテルの外に出るように促すと、井上さん宅に目線を向けて「木を切るなど向こうも大変みたいですね」と他人事のように言い放った。
その後、都内にあるM社も訪れたが、こちらも女性スタッフが「Aはいません。Kホテル? うちは関係ありません」と繰り返すばかりであった。
再び井上さんが訴える。
警察の反応
「この件は本来、隣人とのトラブルなので内々の話し合いで収めたいと考えていました。もともとはこのようにメディアに取り上げられたいとも考えていませんでした。
ただし、あまりにもホテル側の倫理観が欠如していた。警察にも相談しましたが、事態は好転しませんでした。現在、被害届と告訴状を提出していますが、連絡を待っている状況です。
せっかく別荘を建てたのに、家族も不安になっていて訪れようとしません。本当にどうしていいのかわからなかった。そこで、今回メディアのお力を借りようと考えました。
大きな反響があり驚いています。『悪いことは悪い』と皆さまが自分と同じように感じていただけていることがありがたいです。相手方からの誠意ある対応はいまだありませんが、事態が前に進んでほしいと願っています」
近年、富士山が見渡せる観光地では、中国資本によるホテルや旅館の買収が加速度的に進んでいるが、中国人オーナーの暴挙に悩む近隣住民は少なくない。
中国マネーによる不動産の買い占めは各地で起きており、隣人が知らぬ間に中国人になっていてもおかしくない。井上さんの苦悩は決して対岸の火事ではない。
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【もっと読む】前編『「富士山が見えないから切った」…中国資本のホテルが隣人宅のヒノキ23本を無断伐採した、「身勝手すぎる言い分」』
後編『「富士山が見えないからヒノキを枯れ死させよう」《隣人宅の木30本》に勝手に穴をあけて除草剤を注入、中国資本ホテルの「ヤバすぎる所業」』