日本海溝・千島海溝の巨大地震 津波対策強化へ108市町村指定

日本海溝沿いと千島海溝沿いで起きるとされる二つの巨大地震を巡り防災対策を進める必要があるとして、政府は30日の中央防災会議で、北海道から千葉県までの8道県272市町村を「地震防災対策推進地域」(推進地域)に指定した。このうち7道県108市町村については、津波災害が起こる恐れがあることから「津波避難対策特別強化地域」(特別強化地域)とした。さらに二つの巨大地震の対策を巡る政府の基本計画に、最悪の場合で19万9000人とされる想定死者数を今後10年間で約8割減らすとの数値目標を盛り込んだ。今後、各道県や市町村などによる防災対策が本格化する。

地震・津波対策の指定地域

 推進地域は、震度6弱以上の地震が見込まれたり、高さ3メートル以上の津波が予想されたりする地域。対象の市町村は、避難場所の整備や防災訓練の実施などに関する計画を策定することが努力義務となる。

 特別強化地域は、津波で30センチ以上の浸水が地震発生から40分以内(茨城県以南は30分以内)に生じると見込まれる地域など。対象の市町村は、緊急時に逃げ込める「津波避難タワー」や避難路を整備すると、整備費に対する国の補助率が2分の1から3分の2に引き上げられる。対象の市町村に立地する病院や百貨店などは、立地状況によっては、避難などに関する計画の策定が義務付けられる。

 政府による推進地域などの指定は2014年、南海トラフ巨大地震に関しても実施された。この際、特別強化地域の指定基準は「30センチ以上の浸水が地震発生から30分以内に生じると見込まれる地域」とされていた。北海道や東北などの積雪寒冷地は防寒着の準備や移動に時間がかかるため、10分の上乗せとなった。

 想定死者数を約8割減らす目標の実現に向け、政府の基本計画は、30年度までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消する▽津波避難訓練を毎年実施する市町村を今後10年で100%に――など、各省庁の施策における具体的な目標を設定した。

 内閣府が20年に公表した想定などによると、地震の規模を示すマグニチュードは日本海溝地震が9・1、千島海溝地震は9・3。いずれも東日本大震災の9・0を上回る。日本海溝地震は青森県の太平洋沿岸部などで震度6強、岩手県宮古市で約30メートルの津波が見込まれる。千島海溝地震の場合、北海道厚岸(あっけし)町付近で震度7、北海道えりも町で約28メートルの津波が予想される。【安藤いく子】

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