日本製の紙おむつ、なぜ生産が伸びているのか 少子高齢化でも順風

少子化の中、子供用紙おむつの生産が拡大している。高機能な日本製が中国をはじめとするアジアで人気を博し、アジア需要が拡大しているのも一因だが、国内でも「おむつを外すのを急がない」などと育児感が変化した影響で、従来の「ビッグ」より大きいサイズも登場。子供のおむつ使用期間が延びているのだ。高齢化で大人用おむつの需要拡大も続いており、おむつ業界には順風が吹いている。
 日本衛生材料工業連合会(日衛連)によると、今年7~9月の幼児用紙おむつの生産量は27億6561万枚で、前年同期比19%と大幅に増えた。平成24年の年間生産量も前年比10%増の95億9067万枚で、日衛連の担当者は「幼児用おむつの増加はここ2~3年の傾向だが、今年は特に顕著だ」という。
 国内最大手のおむつメーカーで「ムーニー」などのブランドを持つユニ・チャームの平成25年9月中間決算は、売上高が2886億円、営業利益も320億円で過去最高を記録。おむつの堅調な売り上げが牽引(けんいん)している。
 日衛連は23年に発行した「日衛連NEWS」で、乳幼児用紙おむつ対象人口(0~41カ月)は、22年の368万6千人が5年後の27年には339万9千人に減少、これにより需要は約4%減の82億9700万枚に落ち込むと予測。だが、24年の生産実績は予測値を大幅に上回った。
 現実に少子高齢化が進む中、なぜおむつの生産が伸びているのか-。日衛連の担当者は「正確には特定できないが、海外、特に中国向けに『買い占め』て輸出する動きがあるようだ」と話す。
 日衛連の調査は、国内向けのおむつの生産数量だ。メーカーが正規ルートで輸出している分は含まれないが、国内向けに生産・販売しているものでも、海外の業者が独自に買い付けて、通販サイトなどで販売しているケースが相次いでいるという。
 実際、香港マスコミは今年4月、「中国の『運び屋』は、日本製粉ミルクの次のターゲットを、赤ちゃん用紙おむつに定めた」と報道。今月8日、インターネット通販サイト「楽天市場」に不正アクセスしてポイントを電子マネーに換金したとして岐阜、兵庫両県警に不正アクセス禁止法違反容疑などで逮捕された中国人の男も、「電子マネーで紙おむつを購入し、中国に輸出していた」と供述していた。
 中国をはじめ東南アジア諸国では、経済成長に伴う所得向上の影響で、子供用紙おむつの需要が拡大している。「メリーズ」の花王によると、今後は、中産階級や内陸部にさらに需要が広がることもに見込まれ、アジアの紙おむつ市場は2020年には12年比2.2倍の650億枚にまで膨らむと見込まれている。こういった動きをうけ、メーカー各社もアジアでの展開を加速する。
 トイレタリー国内最大手の花王は、「中国を最重点市場」と位置づける。安心・安全が重視されるトイレタリー製品は“反日”に強く、12年秋の反日デモの際も日系企業のベビー用品はほとんど影響を受けなかったともされ、「反日に強い」のが強みだ。
 花王は09年以降、子供用おむつを日本から輸出していたが、中国での同社製品の人気沸騰を受け、昨年中国安徽省に工場を竣工(しゅんこう)。今年1月から、中間所得者向けの新製品「メリーズ瞬爽透気」を販売している。価格も、従来の輸出品の6割程度に抑えた。
 ユニ・チャームも中国を「最重要市場」と位置付けており、昨年3月期の売上高は前期比25.9%と大幅に成長。圧倒的シェアを誇るインドネシアでの売上高成長率は40%を超え、売上高に占める海外比率は今年3月期、52.6%と初めて50%を超えた。アジアへの投資強化により、2020年には売上高を現在の約3倍の1兆6000億円に伸ばす目標を掲げる。「グーン」の大王製紙も11月から中国での現地生産を開始。育児教室なども開き、中国市場への製品アピールに余念がない。
 海外だけではなく、日本国内にも好調の要因があった。「特大サイズ」の需要拡大だ。花王はメリーズのパンツタイプで、これまでの「M」「L」「ビッグ」に加え、今年10月から「ビッグより大きい」サイズ(15~28キロ)の全国販売を開始。王子ネピアも「ゲンキ!」で「ビッグより大きいサイズ」(13~25キロ)を同じく10月に発売した。大手育児用品店によると、各メーカーの子供用特大サイズ紙おむつの売り上げは今年、前年比3割も増加したという。
 背景にあるのは、子供のおむつ使用期間が延びていることだ。かつて「早め」が良いとされてきた「おむつ外し」は、幼児の成長に関する研究などから「急がなくても良い」とする指摘や、ワーキングマザーの増加、おむつの機能向上などもあって、急がない親が増えてきた。
 子供の夜間の「おねしょ」は4~5歳まで続くこともあり、「夜の漏れが心配」と大きめサイズを求める親も多いという。保育関係者は、「昔は2歳のうちにはおむつを取るのが一般的だったが、最近は3歳以降になってもおむつをしている子が増えている」と話す。
 おむつは、機能性の高さから日本メーカーが世界でも優位に立ち、日本の素材メーカーの技術力が生きる分野だ。少子高齢化が進む国内では大人用紙おむつの売り上げも子供用以上に拡大を続けている。今後も日本・世界市場ともに、さらにビジネスチャンスが広がりそうだ。(阿部佐知子)

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