日本軽視がアダに。韓国が大国から相手にされなくなる危ない未来

「慰安婦和解・癒し財団」の解散に始まり、「徴用工問題」で相次ぐ賠償命令確定判決と、国家間での約束を反故にする韓国の動きに、日韓両国の関係はかつてなく悪化しています。『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の著者、島田久仁彦さんは、ペンタゴンなど独自のルートからの情報で、韓国は米中ロからも相手にされなくなってなっていると指摘し、この状況が東アジアに及ぼす悪影響を憂慮しています。

Point of No Return?! 日韓を覆う暗い未来

北朝鮮問題に絡み、韓国の文大統領政権は“米朝の橋渡し役”を果たし、平和実現への使者とでも言わんばかりの動きを内外にアピールしていますが、日本との関係については、融和や友愛という精神とは正反対の対応を取り続けています(どちらかというと、完全に「日本軽視」です)。

それが顕在化したのは、「慰安婦和解・癒し財団」の解散を日本に対して一方的に通知したことに始まり、すでに2国間で解決済みと合意していた徴用工問題での訴訟の連発です。加えて3つ目が「海上自衛隊の旭日旗問題」です。これまでにも慰安婦少女像の在韓国日本大使館前の設置やサンフランシスコやドイツでの設置という行動に出ていましたが、日本政府は外交上、公式に抗議は行ってきましたが、報復行動に出ることはしてきませんでした。竹島問題もしかりです。

しかし、最近の3つの“挑発”とも言える行為は、政府はもちろん、これまで経済的な関係から“韓国の度重なる反日行動”をスルーしてきた産業界をも激怒させることになり、恐らく戦後最も日韓間での緊張度が高まっている時期でしょう。

そのような緊張関係が高まる中、韓国の文政権は特段、その緊張を和らげる対策を取ろうとしておらず、日本側では、官民挙げて、「韓国を切り捨ててはどうか」というオプションまで考えらえている状況です。北朝鮮に対する包囲網の維持という観点からも、東アジアの経済の安定性の確保という観点からも、日韓関係がこれ以上ギクシャクするのは決して望ましくありませんが、今後、どのような方向に進むのでしょうか?日韓の二国間関係、アメリカや中国、北朝鮮なども交えた東アジア情勢の観点から見てみたいと思います。

まず2国間関係ですが、今のところ、改善のきっかけが見つからないというのが現状かと考えます。通常、内政で躓きがあり、韓国政府に国民の非難の矢が飛び始めると、竹島問題や慰安婦問題をクローズアップし、批判の矛先を日本に向ける“日本カード”が切られますが、今回はちょっとやり過ぎたようで、日本を完全に激怒させる結果となっています。徴用工をめぐる裁判の連続と、慰安婦癒し財団の解散通告です。

大統領府および韓国外務省は、これらの問題について「困惑している」といったコメントをしていますが、ここまで日本を怒らせることになったのは、完全に文政権の読み間違えでしょう。徴用工問題については、すでに2国間で解決済みとされ、それは韓国政府も合意事項と認めていますが、今になって、三菱重工などを相手取り、多くの賠償請求をめぐる裁判が行われ、続々と「賠償を命ずる判決」が出ています。

連日メディアは、その件を取り上げて、「日本は賠償せよ!」と叫ぶ元徴用工とその支持者の姿を映し出していますが、実際の韓国民の盛り上がりはどうなのでしょうか? そして慰安婦問題については、2015年の合意で「不可逆的かつ永久に解決すること」を確認していますが、今回、あえて外交儀礼に大きく反するような行動に出て、日本を威嚇しているように感じます。

実際のところは、ほとんどが無関心もしくは日本を怒らせることで大きな損失を被るのではないかとの懸念を示しています。無関心層については扱いませんが、懸念を表している層は、主にビジネスや金融に携わる国民と、日本文化へのあこがれを抱いている若者層で、どちらも今回の騒動をここまで増長させ、日本との外交関係を完全に危機領域に押し込めたのは、文政権の能力のなさだと批判しています。

それを受けてか、朝鮮日報なども「文政権および大韓民国には、経済的にも安全保障面でも、日本と戦う能力がないのに、今、無駄に日本を怒らせている」と批判し、「北朝鮮との融和という夢物語に現を抜かし、韓国の利益を損ねている」とさえこき下ろしています。

そして公言こそしませんが、いろいろと個別に聞いてみると、慰安婦問題についても「由々しき問題で許せないことであるが、いつまでも過去にしがみつくことで日本との関係をギクシャクさせるべきではない」と話す国民が増えてきていることも注目すべきで、実際にはいち早く正常な温和な関係を築くべきとする意見が多くなっています。

しかし、日本では、このような現況が知らされることはなく、韓国政府が用いる“日本カード”ほどではないにせよ、時折「韓国はけしからん!」というKoreaカードを政府やメディアによって発動されるのみです。実際には、政府間の“ゲーム”のようなもので、両国の国民同士の付き合いではさほど敵対化していません。

そのような現状があり、ビジネス界(産業界)はその反韓国の感情にこれまで乗ることはなく、淡々とビジネスを行ってきたのですが、今回の徴用工問題では、韓国からの撤退や投資の引き上げを真剣に議論し考慮するほど、「完全なルール違反であり、このような国とは安心してビジネスができない」と激怒しています。さすがにすぐに行動をとることは控えているようですが、韓国側、特に政府がどのようなハンドリングをするのか、注視していると言います。

また、同じく日本政府も、激しく抗議しつつ、韓国政府側の出方を見ていますが、これまでのところ、いろいろと高官の相互訪問などを通じて打開策を探っているようですが、韓国政府側、特に大統領府と外務省に、これといった策はなく、話し合いも平行線で(というか韓国政府側も困っているようで)、解決の見込みは低いと言えます。日本側としては、官民ともに、原則動けない案件であるため、文政権がハンドリングを誤れば、2国間関係に対して大きなコストを課す結果になるかもしれません。

日韓の関係悪化が影を落とす東アジア情勢

日韓関係が修復不可能なレベル近くまで来ているという“危機”は、東アジア情勢にも大きな負の影響を与え始めています。その多くは対北朝鮮の措置に関わる内容ですが、他には中国との付き合い方に関する内容にも影響が出ています。そして、それらにはすべて「いかに米国を巻き込みつつ、東アジア情勢を安定させるか」というより大きな外交イシューが絡んでいます。

まず北朝鮮絡みでは、ご存知の通り、米朝首脳会談の実現に向けて、先の南北首脳会談がその“つなぎ”の役割を果たしたと言われ、また第1回目の米朝首脳会談後に、米朝関係に緊張感が生まれた際に、文大統領が平壌を訪れて、その緊張緩和に努めたと伝えられています。韓国内ではその役割を評価する向きもあるのですが、米国内そして中国、ロシアなどの“関係国”の中では、最初こそ、評価する向きもあったのですが、今では「文大統領は金正恩氏のスポークスマン」とか「まるで大韓民国を北朝鮮に差し出したようなそぶり」とまで批判されていますし、トランプ大統領、習近平国家主席、そしてプーチン大統領からも、まともに相手にされていないとのことです。

さらに日本については、再三の「日朝首脳会談へのつなぎ」や「拉致問題への言及と具体的な進展の依頼」、「北朝鮮とのやり取り内容のシェア」など、いろいろと安倍総理から文大統領に依頼してきましたが、一度もまともに応えてくれたことはありません。また、アメリカのペンタゴンから聞いた話によると、米朝首脳会談の可能性が出てきたころから、トランプ大統領やマティス国防長官の意向もあり、北朝鮮包囲網を強固にするために(そして対中国包囲網の強化という観点からも)、今後の軍事演習や安全保障関連の取り組みはすべて日米韓の3か国での開催としたい旨、日韓に伝え、日本サイドからは歓迎の意が表明されたが、韓国政府から「断固拒否する」との強いメッセージを受け取ったとのことで、アメリカ政府としては“日韓のスプリット”をはっきりと感じ取ったとのことでした。

この裏では「海上自衛隊の旭日旗問題」があり、「旭日旗を止めない限り韓国は日本とは合同演習はしない」とのメッセージなのですが、「どうして“今”なのか?」と日米ともに腑に落ちない様子です。そのころから、トランプ大統領は安倍総理に対し「文大統領はあてにならない。いざというときは……」と繰り返し述べているそうです。それから、北朝鮮も日米韓が一枚岩でないことを突いて、それぞれに対して微笑み外交を繰り返しつつ、何もしないという引き延ばし対応を許してしまっているということです。

また中国の習近平国家主席もその点(日米韓国間のスプリット)はよく意識しているようで、北朝鮮への対応を盾に、日本やアメリカ、そしてロシアに対してもいろいろな外交ゲームを行っています。それが米中の“争い”(貿易戦争、南シナ問題など)を余計に複雑にしており、東アジアを混乱の場所にしてしまっています。 韓国の文大統領および韓国が、国際社会からその不甲斐なさを嘲笑される中、中国は北朝鮮チャンネルも使いつつ、元々まともに相手にしていない文政権を手懐けようとしていると言われています。文政権もそれに乗ってフラフラしており、ついには、これまで韓国外務省では北米局しか存在しなかった局を新設し、中国局を設置する代わりに、これまでエリートコースとさえ言われていた日本担当部署を格下げし、インドやオーストラリアを所管する西南アジア太平洋局に統合するという中国シフトを明確にし、よりアメリカ政府や日本政府をイライラさせるきっかけになっています。

ここでも、日本政府にとっては、トランプ大統領のように直接文大統領を叱責するようなことはしませんが(たぶん)、東アジア情勢の安定のために韓国は当てにならないとの認識を強め、すでに「韓国外し」を前提に北朝鮮問題をはじめとする東アジア情勢の解決のための戦略を練り直しているようです。

このギクシャクはアメリカも十分に意識し、あまりにも北朝鮮と中国に傾倒する文大統領に対して、異例ともいえる最後通牒を突きつけています。11月20日から始まった米韓間での「北朝鮮の非核化のためのワーキンググループ」ですが、これは、アメリカにとってあくまでも文政権が過剰に北朝鮮との融和に邁進することがないように監視するためのものであるようです。同時にハリス駐韓米大使に「米韓同盟が永続的に続くという前提はない」と、このまま対米軽視、対日軽視が続くと、米韓同盟の解除もあり得るとの発言をさせて、プレッシャーをかけていますが、これまでのところ、特に韓国サイドからは反応がないようです。

日本に喧嘩を売り、同盟国アメリカも軽視し、ひたすら中国の策に乗って(同等とは扱われていないにもかかわらず)中国への傾倒を進め、そして本当にくるかも、いつ来るかもわからない金正恩氏のソウル訪問に熱を上げている文大統領の韓国は一体どこに進もうとしているのでしょうか。

第2次世界大戦後、様々な荒波を越えて、安定と平和を手に入れた東アジアに不穏な影が差してきている気がするのは私だけでしょうか。

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