日本酒の輸出、過去最高 「寿司ブーム」と相乗効果

海外の日本酒ブームが続いている。財務省の貿易統計(速報値)によると、2010年の日本酒(清酒)の輸出は1万3770キロリットル、約85億円となり、過去最高を記録した。
輸出先(数量ベース)は米国が最も多く3705キロリットル。次いで韓国の2587キロリットル。台湾の1639キロリットルで、香港、中国と続く。最近はカナダやオーストラリア、シンガポールなどにも広がりをみせる。
これまでの記録は2008年の1万2151キロリットル、約76億円だった。09年はやや減ったものの、日本食ブームの波に乗って輸出は再び右肩上がりに転じたようだ。
ドバイでは1万円の吟醸酒が10数万円
日本酒の輸出は、数量ベースでは10年11月時点で1万2223キロリットルとなり、現在の貿易統計で記録しはじめた1988年以降で過去最高が確定していた。これに、12月単月に1546キロリットル、約9億円を輸出したことで、金額ベースでも08年を上回った。
海外でも健康志向が高まる中で、寿司に代表される日本食ブームが続いており、食にマッチする相乗効果として日本酒が飲まれている。
米国では富裕層を中心に純米酒などの高級酒が好まれ、またドバイでは1万円弱の吟醸酒が10数万円にものぼることもあるという。香港などでは辛口の純米酒が人気で、冷酒タイプも売れているそうだ。
大手酒造メーカーの月桂冠は、1989年に米国月桂冠を設立。いち早く米国進出を果たしたが、現在は米国市場をまかなっているほか、カナダやブラジル、欧州向けの一部をここから輸出している。
国内からの輸出は、「大吟醸のような高い技術のいる日本酒で、米国などに向けて輸出している」という。
同社によると、「最近、輸出が好調なのは韓国向け」という。韓国酒の「マッコリ」が日本で人気なように、韓国では日本酒がちょっとしたブームだそうで、「食の交流が進んだことが好調な原因ではないか」とみている。
国内市場では苦戦、95年度の半分に落ち込む
海外での「日本酒」をブームに終わらせないため、ある蔵元では日本酒と合う料理や「カクテル」の研究に乗り出した。日本酒造組合中央会は、「日本酒スクールの開催など、わたしたちも世界に向けて日本酒の情報を発信していきます」と力を込める。
そんな一方で、国内市場では苦戦が続いている。国税庁のデータをもとに日本酒造組合中央会がまとめた資料によると、日本酒の国内消費量は08年度で63万キロリットル。年々減少を続け、1995年度の126万キロリットルの半分にまで減った。
月桂冠では、「ハイボールのようにお酒の種類が増えたり、食材も豊富で欧米風の料理が増えたり、飲み方が変わったことが大きい」とみている。
また、老舗の蔵元が多い伏見酒造組合は「若者のアルコール離れに加えて、健康志向の高まりで年配の人も(お酒を)飲まなくなったことが伸び悩みの原因」と指摘。輸出は増えているものの、国内の落ち込みをカバーしきれていない、厳しい状況にある。
国内市場の掘り起こし、なかでも若者に飲んでもらおうと、伏見酒造組合では京都のホテルと協力して宴会やパーティーでの乾杯に日本酒の無料サービスを実施するなどの策を講じている。

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