日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効すれば、世界の国内総生産(GDP)の約28%、世界の貿易額の約37%を占める世界最大級の自由な先進経済圏が誕生することになる。日本を起点としたモノやカネの行き来は一段と活発化しそうだ。
日本とEUは17日、首相官邸でEPAの署名式を開いた。EPAは日本とEUの双方で批准手続きが順調に進めば来年3月までに発効する見通しだ。日欧EPAは4年余りの交渉を経て、昨年12月に妥結した。
消費者は欧州産食品の値下げの恩恵を受けられそうだ。ワインは協定発効と同時に輸入関税が撤廃され、一般的な750ミリリットル入りのボトルの場合で最大約94円安くなる。ナチュラルチーズは16年目に3万1000トンの輸入枠が無関税となる。
高級ブランドのバッグや靴、洋服も安くなる可能性がある。バッグの場合、最大18%の輸入関税が11年目に撤廃される。衣類は最大13.4%の関税が即時撤廃される。
欧州産品の輸入が増えれば、特に国内の農林水産業関係者には脅威となる。農林水産省の試算では、協定発効で最大1100億円の生産額減少が見込まれる。
一方、日欧EPAで日本は農林水産関係で大方の関税撤廃を勝ち取った。地域の農林水産物や食品をブランドとして保護する「地理的表示(GI)」の相互に保護する取り組みも注目される。日本側は「神戸ビーフ」(兵庫県)や「夕張メロン」(北海道)など48産品、EU側は71産品が選ばれた。
斎藤健農水相は17日の記者会見で「EUは日本食に関心の高い地域だ」と述べ、EU側が牛肉や卵など動物性由来の食品に設定する厳しい検疫条件に対応する方針を示した。政府が成長戦略に盛り込む「攻めの農林水産業」は自由貿易体制の強化とともにアクセル全開で展開されることになる。(米沢文)