日清「ラ王」CMの子役に主婦たちが癒されたワケ

あなたのお気に入りのCMは、何位にランクインしているだろうか?

CM総合研究所が毎月2回実施しているCM好感度調査は、東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象として、関東在住の男女モニターが、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに思い出して回答するものだ。

最新の2019年10月前期(2019年9月20日~2019年10月4日)調査結果から、作品別CM好感度ランキングTOP30を発表。その中から、CM総研が注目するCMをピックアップして、ヒットの理由に迫る。

「ご褒美ラ王」のCMは主婦層から高評価

 広告業界では、消費者の目を引く効果的な手法として「3Bの法則」が広く知られている。Beauty=美女(美男)、Beast=動物、Baby=赤ちゃんという3つの“B”を指す言葉だ。CM好感度ランキングの上位にも、人気タレントや子役、動物が出演するCMが数多く見受けられる。

 今期では3位の日清食品『ラ王』のCMが象徴的といえるだろう。『日清ラ王 袋麺』は 2012年に発売され、 当時は「まるで、生めん。」というキャッチコピーで食感とおいしさを表現した。近年のCMには西島秀俊や阿部サダヲ、千葉雄大ら人気俳優が出演し、主に男性をターゲットに広告展開をしてきた。

 今回発売された『日清ご褒美ラ王』は、頑張った自分にご褒美をあげる女性が増えていることに着目した新シリーズで、大豆イソフラボンやコラーゲン成分が配合されたプレミアムタイプの袋麺だ。CMは、家事に追われため息をつく母親(佐田真由美)のもとに、天使の格好をしたふたりの幼い子どもたちがやってきて、舌足らずな言い方で商品を薦める内容。

 疲れた母親を子どもがねぎらうストーリーは母子が登場するCMによくある展開だが、子どもが「豆乳担々スープ」「黒酢酸辣湯スープ」という肝心のメニュー名を上手に言えない様子がほほ笑ましく、かわいらしさを際立たせている。CM好感度調査では、ターゲットである主婦から「子ども達が商品名を言えないところが、すごくかわいい!!」「お母さんも癒やされるCMだと思う」等の声が寄せられ好評価だ。

 22位のJR東日本『踏切事故0運動』は、CMに鈴木福の弟・楽を起用し、交通ルールの遵守を訴えた。黄色と黒のしま模様の服を着た楽が踏切に扮し、「僕がカンカンカンって言ったら、渡らずに止まってください」などと呼びかける内容だ。

 CM好感度調査のモニターからは「踏切を擬人化するアイディアが斬新で印象に残りました」「子どもが呼びかけるのも効果ありだと思った」といったコメントが寄せられ、子役を起用した効果がうかがえる。同じメッセージを伝えるにしても、「正しく伝える」以上に、誰が言うか、どのように言うかで受け手側の印象が変わる事例だろう。

 このほか、情報のインパクトを左右する大きな要因として「タイミング」が挙げられる。同じメッセージや出演者であっても、いつ情報を受けるかで記憶の残り方はかなり異なる。例えば今期では、3000作品以上のCMがオンエアされたうち16位と20位にラグビーに関するCMがランクインした。

 16位は大正製薬『リポビタンD』で、ラグビー日本代表の主将リーチ マイケル選手が、来日してからの日々を感謝とともに振り返り自身を奮い立たせるというストーリーだ。

 20位の三菱地所は、高畑充希がさまざまな表情を持つ丸の内という街を紹介するシリーズCMの第4弾。ラグビー熱の高まりを受けて、照英らビジネスマンたちがスクラムを組みながら名刺交換をしたり、リフトアップしてタクシーを止めたりと街中が盛り上がる様子をコミカルに描いた。

情報を受けるタイミングの重要性

 どちらのCMもラグビーワールドカップ開幕以前からオンエアされていたが、日本代表の好成績に伴いCM好感度を伸ばした。とくにリポビタンDは、今期よりも旺盛に出稿していた6月と比べCM好感度は一気に3倍以上に跳ね上がり、モニターコメントには「今が旬のCM」「ラグビーワールドカップの盛り上がりに比例して印象深くなっていると思う」「ラグビーワールドカップで日本が盛り上がっている中、印象的なCM」といった感想が並んだ。

 三菱地所は前述のCMのほかに、「同じじゃないから、強いんだ」をコピーに、個性の異なるふたりの少年がラグビーを通して成長する姿を描いた特別CMを開会式と試合中継の番組内限定でオンエア。番組が高視聴率だったこともあり、今期はわずか9回という放送回数ながら親和性が高く視聴者の心に響きやすい内容でCM好感度を獲得し、SNSなどでも話題となった。

 「よくあるわかりやすいストーリーではあるが、ラグビーW杯でラグビー熱が高まっている時期なのでよかった」と記述したモニターもおり、情報を受けるタイミングがいかに消費者の印象に影響を与えるかがよくわかる。

 ビジネスシーンでもよく言われることだが、「伝える」と「伝わる」はまったく違う。どのように言うか、いつ言うか。CMも企業と消費者のコミュニケーションである以上、やはり受け手を取り巻く情報環境や心の動きにフィットさせる工夫をしているCMかどうかで、広告効果に差が生まれる。

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