日産が“韓国斬り” ルノーサムスン受託生産中止

韓国自動車業界に「激震」が走りそうだ。同国の自動車メーカー「ルノーサムスン」が、日産自動車から請け負っていた受託生産が、来年9月に中止になることが決定したのだ。この受託生産は、ルノーサムスンの生産台数の約半数を占めている。同社は日産に対し、新たな受託生産を求めるとみられるが、見通しは暗い。日産前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)逮捕に伴い、日産と仏ルノーとの対立が表面化したうえ、いわゆる「徴用工判決」などで日韓関係が最悪だからだ。技術革新でも遅れた韓国自動車業界の未来は絶望的だ。

「釜山工場の日産ローグ生産を2019年9月に中止することにした。残り10カ月間で日産ローグに代わる生産台数を確保するため、交渉を続けていく」

韓国紙、朝鮮日報(日本語版)は1日、ルノーサムソン関係者の話として、こう伝えた。

仏ルノーが80%を出資するルノーサムスンは14年から、北米向けに日産が輸出する中型SUV「ローグ」を受託生産している。同紙によると、昨年時点で、ルノーサムスンが生産した車両の46・7%はローグで、輸出台数の70%以上を占めている。

ルノーサムスン側は「日産ローグの契約期間(5年)終了に合わせて、新たなSUVを生産ラインに投入する案をルノー本社と緊密に協議しており、遅くとも20年初めまでには追加台数を確保することになるだろう」と語っているという。

だが、日産から新たな委託契約を得られる見通しは、限りなく暗い。ゴーン容疑者の逮捕後、日産とルノーの間で主導権争いが勃発(ぼっぱつ)したうえ、韓国最高裁の異常判決で、日本企業の韓国熱は冷めている。

安倍晋三首相と、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は11月30日、アルゼンチンで開かれたG20(20カ国・地域)首脳会合(11月30日~12月1日)に合わせて会談した。主要課題は日産とルノーの問題だった。

ルノーの大株主である仏政府は、自国の雇用確保や産業育成のため、日産への影響力を高めたい意向とされる。これに対し、安倍首相は、日産とルノー、三菱自動車の3社連合(アライアンス)について、「日仏産業協力の象徴」と指摘したが、今後のあり方は「民間の当事者間で決めるべきで、政府がコミットすべきではない」と距離を置いたのだ。

「ルノーサムスンの頼もしい味方だった」(朝鮮日報)というゴーン容疑者が逮捕されたことで、韓国自動車業界では、委託生産契約の「延長は難しいかもしれない」という推測が流れていたという。

韓国事情に精通するジャーナリストの室谷克実氏は「韓国の自動車メーカーの労働組合は『世界有数の戦闘的労組』として知られる全国民主労働組合総連盟(民主労総)に入っており、大闘争になるだろう。具体的には、韓国政府と一緒になって、日本政府と日産に対して『発注しろ』と圧力をかけてくるだろうが、現在の日韓関係では、そのような圧力が効くかは疑問だ」と語る。

いわゆる「徴用工判決」で、日韓関係は史上最悪といえる状況に突入している。日本人の怒りは沸点に達しているうえ、国家間の約束ですら簡単に反故(ほご)にするような国では、まともな企業活動が行えるのか大いに疑問といえる。

安倍首相はG20の期間中、ドナルド・トランプ米大統領や、ロシアのウラジミール・プーチン大統領ら、各国の首脳と精力的に会談を行った。だが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とは会談しなかった。

文氏は1日、G20を終えてニュージーランドに向かう専用機内で、「過去の歴史問題は別途、賢明に処理しながら未来志向の協力をしていかなければならない」(聯合ニュース)と記者団に語ったという。

自国こそが、歴史問題を蒸し返し、両国の協力関係を損なっていることを忘れたのか。戦闘的労組の怒りが自身に向かうことを恐れたのかもしれないが、日本としては絶対に受け入れられない。

そもそも、ルノーサムスンだけでなく、韓国の自動車業界自体が苦境に陥っている。

中央日報(日本語版)によると、韓国を代表する自動車メーカー「現代自動車」の7~9月期の営業利益は前年比で76%減少し、2010年に国際会計基準が導入されて以来、最低だった。

韓国自動車業界の未来について、前出の室谷氏は「最先端技術への投資が少なく、自動車の技術発展についていけなくなっている。投資をしていない分、海外の他メーカーとの提携で補おうとしているが、技術を盗まれる恐れがあるため、どこも応じないだろう。韓国の自動車業界の未来は暗い」と語った。

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