11月6日付日本経済新聞の1面に『三菱自と世界で連携 日産・ルノー 小型車やセダン』という見出しが躍った。日産・ルノー連合と三菱自動車が、国内で軽自動車分野にとどまっていた提携を世界市場に広げ、戦略小型車やEV(電気自動車)の共同開発を検討し、経営危機が囁かれるルノーの韓国工場を活用するという内容で、例えば次のように伝えている。
「日産・ルノー連合と、先に買収したロシアの最大手、アフトワズを合わせた2012年の世界販売台数は800万台。これに三菱自の100万台が加われば900万台になる。世界シェアトップのトヨタ自動車(975万台)、米GM(929万台)、独VW(928万台)に匹敵するグループになる」
しかし、「年900万台」「GMやVWに匹敵」と書かれているものの、日産・ルノー連合が三菱自を子会社化したり、資本参加するわけではないので、単純に3社の販売台数を足し合わせて比較することはできない。
また、同日付同紙2面では日産・ルノー連合を含め「世界の車再編『4強』を軸」でと報じられているが、ルノーは不振で日産も新興国で苦戦しているだけでなく、稼ぎどころの北米でも利益を上げられていない。同連合傘下のアフトヴァーズも不振を極めており、2013年の同連合の販売台数は800万台を下回る、と予想する向きもある。
こうした見方を裏付けるかのように、この日経報道があった5日、東京市場における日産の株価は100円以上も急落。翌6日は9円高の870円で始まり、前場の終値は17円高の878円で大引けは24円高の885円と、前日の急落からの反発は弱かった。
●「弱者連合」との厳しい見方も
三菱自は11月5日、日産・ルノー連合と電気自動車(EV)開発やセダンの生産で提携を検討する、と発表した。あくまで「検討」であり、合意したわけではない。
電気自動車(EV)で世界一の日産と同2位の三菱自が組むわけだから、株式市場はもっと好感していいはずだが、09年に発売した三菱自の「アイ・ミーブ」などEVの12年度販売台数は7000台。日産のEV販売が苦戦を続けていることも知られている。昨年以降、米国ではEVメーカーや電池会社の破綻が相次いでいる。
そうした中、トヨタは2015年にも燃料電池車の市販のメドをつけ、ホンダも同年にも投入する。航続距離がEVの2~3倍の燃料電池車がEVを一気に駆逐する可能性が出てきた、との見方も多い。
また、三菱自が強みを発揮してきた虎の子市場のタイが変調を来している。三菱自は10月29日、タイの13年度通期の販売計画を3割減の10万3000台に下方修正した。タイ政府が進めてきた自動車購入補助金制度が終了した反動としているが、それだけではない。9月のタイの新車市場は前年同月比16%減となり、三菱自の主力車「ミラージュ」も伸び悩んだ。
三菱自・益子修社長にとって日産・ルノー連合との提携拡大は、いわば背水の陣。EV、東南アジア、特にタイ市場の先行きが読めない状態で、同じく厳しい経営環境が続く同連合との提携拡大は果たして功を奏すのか? 業界内では「弱者連合」と冷ややかに見る声も多い中、その行方が気になるところである。
(文=編集部)