【ソウル=桜井紀雄】「日露戦争中の1905年に沈んだロシア軍艦を日本海の海底で発見。軍艦は150兆ウォン(約15兆円)相当の金塊を積んでいた」-。こんなニュースが先月、韓国内外を駆けめぐった。だが、引き揚げを表明した韓国企業に投資詐欺疑惑が浮上。警察が7日、関係先を家宅捜索する事態に発展した。
韓国企業「シニルグループ」が先月17日、日本海海戦で自沈した露バルチック艦隊の巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」を鬱陵(ウルルン)島沖海底で見つけたと発表したのが発端だ。同艦は大量の金塊を載せていたとの噂が以前からあり、過去にも別の韓国企業などによって引き揚げが試みられてきた。
シニル側はサイトに「150兆ウォン」「宝船」などと掲げ、引き揚げを担保に仮想通貨を販売。「取引所に上場すれば、約200ウォンのコインが1万ウォンになる」と触れ込み、10万人以上から数百億ウォンを集めたともいわれる。当初、韓国内外の主要メディアが発見のニュースを大きく報じたことが結果的に投資を後押しした。
だが、ロシアの専門家らが「金塊話は根拠がない」と相次ぎ否定。先月末には同社側も根拠がなかったことを認めた。投資者らが被害者の会を結成したほか、以前に発見したと主張する企業側が告発。事件の中心人物とされる関連会社の前会長は国際手配された。
同社が公表した映像も過去の探査時のものを流用した疑いも指摘されている。うたかたの金塊発見話は海の藻くずと消えそうだ。