東日本大震災の津波で児童・教職員計84人が犠牲になった宮城県石巻市の旧大川小の卒業生らが、伝承や地域活性化の取り組みを持続的に進めるための拠点づくりを始めた。29日に開所式があり、卒業生は「悲しみだけでなく地域の未来を考え、語り合える場にしたい」と思いを語った。
「悲しい場所」から「未来語る場」へ
拠点づくりを進めるのは「Team(チーム)大川 未来を拓(ひら)くネットワーク」。震災遺構の校舎近くに市有地(約3800平方メートル)を借り受けた。
本年度は遺族や地域住民が見学者らと交流できるスペースやカフェ、図書コーナーなどを設ける。横浜市の事業者から寄贈を受けたコンテナハウス2棟を仮設事務所として使い、構想を練りながら今後数年かけて敷地全体を整備する。
2021年に一般公開が始まった旧大川小の来場者は年間約8万人。拠点づくりは、人が住めない災害危険区域になった地域ににぎわいを取り戻すと共に、収益事業を行うことでチーム大川の持続的な活動につなげる狙いがある。
開所式には、地域住民や協賛団体の関係者約50人が出席。米国を拠点に活動する日本人投資家が約880万円を寄付するセレモニーもあった。
代表の只野哲也さん(24)は「悲しい場所という印象が強く、なかなか未来の話につながらない。訪れた人に自然豊かな大川地区の魅力を知ってもらい、地域のこれからを共に考え、語り合える場にしたい」と語った。