1920年代に仙台市泉区福岡の七北田川で稼働していた水力発電所「冠川(かむりがわ)根白石発電所」を、後世に伝えていこうと、地元住民が保存団体の設立を進めている。現在でも、取水用のせきや水を通したトンネルの跡が残っている。地元住民は「地域の文化遺産を子どもたちに知ってほしい」と話している。
発電所跡の保存や管理を行う住民組織づくりを進めているのは、泉区根白石の上の宿町内会の会長庄司一史さん(73)と副会長渋谷満さん(67)たち。
冠川根白石発電所は、旧根白石村(現在の泉区西部)の村誌などによると、1920年8月に地元選出の県議らが電気会社を設立し、着工した。
21年1月に営業発電を開始。当時の根白石村と宮床村(大和町宮床)の443戸に送電した。29年8月、電力需要が高まり各地に発電所が開設された影響で廃止された。
発電所が稼働していた当時から近くに住む農業鴇田豊吉さん(89)によると、発電所の社宅に電気で沸かす風呂があり、毎日のように入りに行ったという。「電気を川に流して魚を捕っていた」との思い出もある。
現在は、取水用のせきの一部が七北田川に残る。そこから約500メートル南東にトンネルが延び、コンクリート製の出水口の遺構がある。発電用モーターが設置されていたとみられる出水口部分は低木や草で覆われ、ごみも詰まっている。
「発電所廃止後、トンネルの中は遊び場だった」と振り返る庄司さん。団体設立により、発電所跡に表示板や案内板の設置を検討するほか、地元住民や市に協力を呼び掛け、現場周辺の清掃や子どもたちに伝える活動を展開したい考えだ。
渋谷さんは「地域にあった発電所を歴史に埋もれさせておくのはもったいない。エネルギーへの関心が高まっている今こそ、多くの人に知ってほしい」と話している。