早く稼働して電気料金を下げろ!!

女川再稼働「賛成」53%、初の

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から12年になるのを前に、河北新報社は宮城県の有権者を対象に原発に関する電話世論調査を実施した。東北電力が2024年2月に計画する女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に関し、賛成が53・2%と反対の46・7%を上回り、17年に現在の方式で調査を開始して以来初めて、賛否が逆転した。

燃料価格高騰が影響か

 賛否の推移はグラフの通り。「賛成」「どちらかといえば賛成」の合計が年々増え、「反対」「どちらかといえば反対」の合計が減少。22年3月の前回調査は賛成が41・5%、反対が56・7%と反対が上回っていた。

 今回、賛成理由で最も多かったのが「再生可能エネルギーへの移行までに当面必要」で43・5%。「電気料金を安くできる」が31・9%で続いた。それぞれ前回から9・9ポイント、8・6ポイント増え、ロシアのウクライナ侵攻を背景にした燃料価格高騰の影響がうかがえる。「地元経済への影響が大きい」は13・1ポイント減の12・4%だった。

 反対理由は「安全性に疑問」41・6%、「使用済み核燃料の最終処分場が決まっていない」23・6%、「早期に再生可能エネルギーに移行するべきだ」21・1%の順。「原発がなくても電力供給量は足りている」は4・3%で5・5ポイント減った。冬場の電力不足が影響したとみられる。

 賛否の内訳は「どちらかといえば賛成」34・2%(前回比7・2ポイント増)、「賛成」19・0%(4・5ポイント増)がともに増加。「どちらかといえば反対」27・4%(7・3ポイント減)、「反対」19・3%(2・7ポイント減)はともに減少した。

 地域別では、立地自治体の女川町と石巻市は賛成52・0%(17・0ポイント増)、反対47・4%(16・8ポイント減)で賛成が反対を上回った。個別に見ると女川町は賛成77・9%、反対21・7%、石巻市は賛成50・8%、反対48・6%だった。

 重大事故を想定した広域避難計画策定が義務付けられている原発30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)の登米、東松島、涌谷、美里、南三陸の5市町は反対51・0%(7・1ポイント減)、賛成47・3%(8・3ポイント増)。反対が依然過半数を占めたが差は縮まった。

 広域避難計画は「不十分」「どちらかといえば不十分」が8・7ポイント増の66・9%、「十分」「どちらかといえば十分」が2・8ポイント増の33・0%だった。不十分の理由は「汚染の広がり方の想定が不十分」44・5%、「渋滞発生など混乱が予想される」19・4%など。

 東北電は女川2号機を24年2月に再稼働させる計画。建屋の耐震補強、防潮堤の建設などの安全対策工事を今年11月に完了させる方針。

安全と費用、なお目離せぬ

 【解説】河北新報社が実施した原発に関する電話世論調査で、東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に賛成する人が初めて半数を超えた。この1年で猛烈に進んだ電気代の値上がりの影響がうかがえるが、これを機に原発のリスクが見過ごされないように注視する必要がある。

 東北電が計画する2024年2月の再稼働まで1年。これまでの調査で賛否の差はじりじり詰まっていたが、今回ついに逆転した。

 賛成理由に「電気料金を安くできる」を挙げる県民が急増した。前々回の調査の7・1%から、ロシアのウクライナ侵攻直後の前回は23・3%になり、今回は31・9%に達した。

 東北電は昨年11月、国の認可が必要な家庭向け規制料金で平均32・94%、認可が要らない家庭向け自由料金で平均7・69%の値上げを表明し、実施予定の4月が迫る。電気代の大幅な引き上げが県民意識に与えた影響は大きい。

 この値上げ幅には再稼働の「効果」が既に織り込まれている。東北電は燃料費などの原価を928億円程度削減し、値上げ幅を4・54%抑制したと説明する。 ただ、再稼働で原価は単純には下がらない。卸電力市場からの調達量が減って1361億円程度のコスト減になる一方、原発施設の修繕費や核燃料の処分費用などは433億円程度増す。後者には核のごみをどこで最終処分するのかという「社会的費用」が、さらにかかってくることを繰り返し強調したい。

 原発30キロ圏内の自治体が策定する重大事故時の広域避難計画を巡っては、「不十分」と考えながら再稼働に賛成する人が23・0%、「どちらかといえば不十分」としながら賛成する人が54・2%に上った。

 避難計画に対しては「渋滞の影響を適切に考慮していない」などの指摘がある。住民の安全を守る対策に「抜け」や「漏れ」があるとうすうす気付きながらも原発の再稼働を良しとする判断は、12年前には考えられなかった。

 電気代の抑制と原発の再稼働は、てんびんに掛けて釣り合うのか。首都圏に安価な電力を提供し続けた末に原発事故の甚大な被害を被った東北の地で、粘り強く考えなければならない。(報道部・関川洋平)

[調査の方法]宮城県内の有権者を対象に4、5日、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。電話帳に番号を載せていない人も調査できる。実際に有権者がいる世帯にかかったのは901件、うち609人から回答を得た。地域別の内訳は、女川原発が立地する女川町と石巻市が計152人、女川原発30キロ圏5市町(登米市、東松島市、涌谷町、美里町、南三陸町)が計156人、その他の市町村が計301人。集計では地域別や性別、年代別など有権者の構成に合わせ、ゆがみをなくす補正をした。

賛否逆転 本社世論調査

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