映画「東京タワー」ロケ地「佐野社宅」年内にも解体へ 栗原

映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」のロケ地になった宮城県栗原市鶯沢の「佐野社宅」が年内にも解体される見通しになった。栗原市が、所有する細倉金属鉱業(同市)と結んでいた無償貸借契約を今月末で解消することを決めた。昭和の風情が漂う人気の観光スポットだった社宅は東日本大震災で損傷し、耐震や防犯の問題が保存の壁になった。
 社宅は1934年、同社の前身三菱鉱業の幹部社員用として15棟建設され、一部には2004年まで社員が住んだ。高度成長期の日本の面影を残す建築物として、07年公開の映画「東京タワー」のロケに使われ、同社が無料で公開。08年4月、市が施設の貸与を受け公開を引き継いだ。
 公開は08年6月の岩手・宮城内陸地震で中断。再開後、11年3月の大震災で屋根の瓦や土台が破損し、閉鎖していた。
 市によると、ことし8月「公開再開には安全対策の徹底を」と社側から要望があった。市は対策を検討したが、現在の安全基準に沿った耐震工事は技術的に困難と判断した。佐藤勇市長は「補強を施し維持管理するには膨大な費用が掛かる。解体したいとの社側の意向もあり、お返しすることにした」と説明する。
 細倉金属鉱業の担当者は「映画の話がなければ、取り壊す計画だった。敷地内への出入りは容易で、冬場は火災の懸念もある。防犯上このままにしておけない」と話す。
 同社は年内の解体を計画する。市は現地の様子を詳細なジオラマ模型として残す方針で、近く現地で測量する。
 地元からは解体を惜しむ声が上がった。市の委託で管理運営していた「ほそくら観光ボランティアガイドの会」代表の三塚東市議は「貴重な産業遺産で残念だ。施設の取得も考えたが、受け皿の問題を解決できなかった」と語った。

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