昨年開館の石巻「津波伝承館」 9カ月で解説員交代へ 宮城県、業務委託先を変更

宮城県と国が共同運営する石巻市の「みやぎ東日本大震災津波伝承館」について、県が新年度に展示運営業務の委託先を変更することが分かった。昨年6月の開館から9カ月で解説員が入れ替わる見込み。伝承活動は息の長い取り組みとなることもあり、関係者から「一貫性に欠ける」と疑問の声が上がっている。

配置人数も半減、関係者「一貫性欠く」

 県は昨年12月に公募型プロポーザル方式で2022年度以降の業務委託先を募集した。現委託先の一般社団法人石巻観光協会と、公益社団法人3・11みらいサポート(ともに石巻市)が応募し、審査の結果、みらいサポートを選んだ。近く契約する。

 22年度からの委託期間は3年。21年度は1年だった。県復興支援・伝承課は「まず単年度で対応するべき業務の範囲を見極め、長期の委託に移ろうと考えた」と説明する。

 県は22年度の業務体制などを変更。解説員の配置人数を7人から4人に減らしたほか、委託上限額も1年約2700万円から3年約5100万円に圧縮した。

 委託先の審査も評価項目を追加した。来館者の足を他の被災地に向ける「ゲートウエー」機能の向上を狙い、「伝承団体・伝承施設などとのネットワークの形成が可能か」も判断のポイントとしていた。

 1年弱で交代となる関係者からは不満が漏れる。ある解説員は「新型コロナウイルス下で苦労しながら基礎を築いたところだったのに、実験台にされたようだ。県は伝える人と施設を真剣に生かす気がないのか」と憤る。

 他県では、岩手県が陸前高田市に設けた震災津波伝承館が県の直営となっている。福島県双葉町の県震災・原子力災害伝承館は開館した20年度から福島イノベーション・コースト構想推進機構(福島市)が5年契約で指定管理者を務めている。

 震災伝承に詳しい東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授は「宮城県のコンセプトが固まらないうちに開館した結果、短期間で見直しが必要になったのではないか」と指摘。業務を検証し、方向性を明確に打ち出すよう求めている。

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