昭和の遠洋漁業の貴重な映像をまとめたDVDシリーズ「日本の遠洋漁業」の第1弾として、「北洋サケマス母船式独航船」「激闘!北転の海 第1部」の2作品が発売された。日本の高度成長期の食を支えた遠洋漁業の歩みを後世に伝えていこうと、ミニコミ誌を編集している宮城県気仙沼市の熊谷大海さん(59)が企画・制作した。
北洋サケマスは49分、北転の海は67分。遠洋漁船の通信士や漁労長を務めた気仙沼市唐桑町の伊東重美さん(85)が、8ミリフィルムで船上撮影した映像を中心に構成されている。
北洋サケマスは1965年に撮影され、米国と旧ソ連を隔てるベーリング海での流し網漁や水揚げの様子が収められている。
北転の海は70年の北転船によるスケトウダラ漁の映像。「実入りは良かったが、稼ぎ時の真冬は寒さや着氷、しけで遠洋漁業で最も過酷と言われた」と伊東さんが振り返る現場をうかがえる。
東北からも多くの漁師が乗り組んだが、70年代以降の200カイリ規制や外国の対日漁業規制の強化、減船により、いずれの漁業も衰退し、かつての現場の映像も市販されていない。
若いころ、遠洋マグロはえ縄漁船の乗組員だった熊谷さんは、2004~15年に遠洋漁業のミニコミ誌「みなと便り」を発刊、各地の漁師を取材してきた。同シリーズは「近海まぐろ延縄(はえなわ)漁船」「遠洋まぐろ延縄漁船」など今後11作品の販売を予定している。
熊谷さんは「当時活躍した人が高齢化し、東日本大震災で資料が流失した方も少なくない。貴重な記録を多くの人に見てもらえたらうれしい」と話す。3240円。市内の書店で販売。電話注文も可。連絡先はオフィスみなと倶楽部0226(25)3777。