宮城県大和町の吉岡小(児童729人)が6月30日から、午後に15分間の「昼寝タイム」を取り入れた。児童の情緒安定と集中力アップが狙いで、小学校での昼寝導入は極めて珍しい。寝不足で疲れ気味の児童が目立つことに対応した取り組みで、子どもたちには「気分がすっきりする」と好評だ。
昼寝タイムは給食、清掃活動後の午後1時15分から、昼休みまでの15分間。教室のカーテンを閉め、机にうつぶせになって寝る。BGMにはモーツァルトの曲が静かに流れる。眠くない場合は目をつむるだけでいい。
午前中の中休みと昼休みを5分ずつ短縮し、さらに下校を5分遅らせて昼寝の時間を確保した。1年生が毎日5時間授業となった先週、導入に踏み切った。
発案者の角田研校長は「複数の担任から『午後にうとうとする児童が多く気掛かりだ』との話が出ていた」と、導入の理由を説明する。
5時間目に居眠りして注意されたことがある5年生の佐藤礼大(あやと)君(10)は「少し寝ると午後の授業が頭によく入る」と歓迎している。
同小が先月実施した4~6年生344人へのアンケートによると、普段8時間の睡眠時間を取れているのは4年生で58%。6年生も64%にとどまり、5時間が1人、6時間が10人いた。
3学年とも「午後の授業が眠い」と答えた割合が半数を超え、6年生では69%に上った。睡眠不足の理由は尋ねていないため不明だが、ゲームのし過ぎや習い事などが考えられるという。
小学校での昼寝の導入例について、東北6県の県教委は「聞いたことがない」と口をそろえる。2005年に導入した福岡県久留米市の県立明善高ではセンター試験の平均点が上がり、保健室の利用が減るなどの効果があったという。
吉岡小ではまず本年度末まで実施する方針で、角田校長は「年度末にあらためてアンケートを取り、効果を検証したい」と話している。
<まずは夜の睡眠を/東北福祉大子ども科学部の水野康准教授(睡眠科学)の話>
小学生の昼寝の必要性は調査されておらず、効果は明らかになっていない。児童の心身の成長、学習能力の向上のためには、昼間に眠気を催さないよう十分な夜間睡眠を確保することが大切だ。