昼間に眠気を感じる人ほど脳にアミロイドβが蓄積している

昼食の後、「さあ仕事を再開だ!」の意気込みとは裏腹に、激しい睡魔に襲われてウトウト…そんな経験はありませんか? たまたま前日遅くまでテレビを見ていたとか、本に没頭して寝るのが遅くなってしまったというのであれば、それほど心配はいりません。でも、もし毎日のように昼間に眠気を感じるのであれば、生活習慣を見直したほうがいいようです。
今回は昼間の眠気とアミロイドβの蓄積との関係を調べた研究をご紹介します。

アルツハイマー型認知症の人の脳に多く見られるのが、アミロイドβというタンパク質の蓄積です。アミロイドβは健康な人の脳でも作られますが、何らかの原因で増えすぎると、神経細胞の働きを妨げたり、壊したりしてしまいます。

認知症の発症リスクを高める要因の一つと言われるのが睡眠不足です。そのメカニズムははっきりとはわかっていませんが、動物実験でも、睡眠不足の脳ではアミロイドβの蓄積が有意に増えることがわかっています。

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、高齢になると昼間に眠気を感じる人や、うたた寝をする人の割合が増えることに着目しました。研究に参加したのは平均年齢が約60歳の健康な123人です。それぞれに、「昼間、自分の意思にかかわらずたまらなく眠気を感じることがありますか、またはうたた寝してしまうことがありますか」という質問に答えてもらいました。回答は、「毎日」「週に1、2回」「週に3、4回」「まったくない」のうちから選びます。

定期的に追跡調査をおこない、約16年後に、それぞれの人の脳をアミロイドPETと呼ばれる方法で観察しました。この方法を使うと、脳に蓄積しているアミロイドβの量や場所を頭皮の上から観察することができます。

眠気に関する回答とアミロイドβの蓄積具合との関係を調べたところ、昼間に頻繁に眠気を感じると答えた人は、まったく感じないと答えた人に比べて、約3倍、アミロイドβが多いことがわかりました。性別や体格などでデータを補正しても、この傾向は変わりませんでした。この結果から、昼間に眠気を感じる頻度が高い人では、そうでない人よりも何年か後に、脳のアミロイドβが蓄積しやすいことが示唆されました。

昼間に眠気が多いと、なぜ脳のアミロイドβが多くなるのかについては、今のところ明らかではありません。アミロイドβの蓄積が原因で眠気を誘発するのか、それとも日中眠気を感じるということは、夜に十分な睡眠がとれていないことを意味しており、その結果としてアミロイドβが蓄積されやすくなるのか、そのメカニズムの解明が期待されます。

認知症には今のところ特効薬はなく、予防を心がけることが大切です。最近の研究から、生活習慣の改善が、効果的な予防につながると期待されます。質の良い睡眠を心がけることは、毎日を健康で過ごすためだけではなく、年をとってからの認知症発症を防ぐためにも大切なことなのです。

▼ご紹介した論文
Excessive daytime sleepiness and napping in cognitively normal adults: associations with subsequent amyloid deposition measured by PiB PET.
Spira AP. et al. Sleep. 2018 Sep 5. doi: 10.1093/sleep/zsy152.

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