時短要請で厳しい年末年始に 居酒屋の倒産、過去最多

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、都市部で酒類を提供する飲食店などへ時短要請や休業要請の動きが広がっている。年間で最も稼ぎ時とされる12月の大半が時短要請などの対象に。飲食店関係者からは「この冬を乗り越えられるか不安だ」と嘆く声が漏れる。民間信用調査機関によると、居酒屋の年間倒産件数は10月末時点で最多を記録。専門家からは年明けにかけ飲食業の倒産はさらに加速するとの懸念も出ており、厳しい年末年始になりそうだ。(石原颯)

 「繁忙期がどっぷり入ってしまった。もっと早く動けなかったのか」

 東京・新橋の居酒屋「根室食堂」の平山徳治店長は首をかしげた。忘年会シーズンの12月は書き入れ時。飲食業界の支援策「Go Toイート」も後押しし、例年の7割ぐらいまで客足は戻り師走の繁忙期に期待感が高まっていた。

 例年であれば客足が鈍る1、2月分をこの時期に補っておきたいところだった。「時短要請を(増加の兆しの見えた)11月中旬に出して、感染者を抑え、12月に全面再開にすることもできたはず。タイミングが悪すぎる」とこぼした。

 要請を受け入れ、閉店時間を午前0時から午後10時に短縮する方針で「人件費などの固定費を抑えながら、テークアウトを強化していくしかない」と話す。

 「年末から年明けにかけて飲食店の倒産が加速する可能性がある」と指摘するのは帝国データバンク東京支社の阿部成伸・情報編集課長だ。

 同社の調査では10月末時点で居酒屋の倒産件数が164件と年間最多を更新。東京都では昨年の15件から30件に倍増していることが判明した。この調査は破産手続きなど法的整理をした事業者のみが対象になっており「実際には隠れた倒産が数倍ある」とみている。

 阿部氏によると、春に金融機関などが行った緊急融資の効果が続くのは半年ほどとみられ、10~12月が一つの節目とされていたという。「経営者にとっては最後の希望が消えてしまった形になり、閉店に踏み切る飲食店も増えてくるだろう」と厳しい見解を示す。

 こうした危機的状況に業界団体も気をもむ。都内のスナックやバー、居酒屋など約2200店が加盟する東京都社交飲食業生活衛生同業組合の塚口智理事長は「新宿や銀座に店を構えているところは(東京都の)協力金の40万円では家賃の補填(ほてん)にもならない。もう一度、持続化給付金を給付してもらわないと冬を越えられないところが続出する」と懸念を示した。

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