時給1350円でも集まらない… 人手不足のホテル業界【WBS】

30日、4月の有効求人倍率が発表されました。前の月と同じ1.32倍で、仕事を探している人より求人数の方が多く、人手不足の状況が続いています。中でもある業種では、求人数がおよそ15%も大きく増加しました。それがホテルなどの「宿泊」業です。特に脱コロナで観光需要が回復する中、人手不足が大きな課題となっています。 東京・高田馬場駅前に3月下旬に開業したばかりのホテル「ベッセルイン高田馬場駅前」。フロントスタッフとして働く女性は、4月から新入社員として働き始めたベトナム出身の従業員です。このホテルの従業員12人のうち、実に半分の6人を外国人が占めています。 実は、開業に際して、時給1350円でスタッフを募集したものの、応募がなく、外国人従業員の採用に踏み切ったのです。 「本当に厳しい状況。今後、時給1500円もあり得ると思っている」(ベッセルイン高田馬場駅前の大鋸渉支配人) 5月のこのホテルの稼働率は78%。インバウンドの急速な回復で、予想を上回る宿泊率の中、外国人材は今や欠かせない戦力だと言います。 人手不足が深刻化する中、30日、東京ビッグサイトで開かれたホテル関連の展示会「ホテル開発&リニューアルフェア」。人だかりができていたのは、ファミリーレストランなどでも見かけるようになった配膳用のロボット。人手不足解消に繋がると関心が高まっているのです。 実際導入した湯本富士屋ホテルでは、配膳にかかる時間がおよそ25%削減され、人件費負担の削減にもつながったといいます。配膳ロボットを販売するアルファクス・フード・システムの菊本健司さんは「ビジネスチャンス。皆さんがロボットを活用していく時代」と話します。 さらに、IT系ベンチャー3社が共同で企画・開発しているのが、遠隔接客を行う「アバターロボット」です。離れた場所にいるオペレーターが、ロボットを操作し、アバターを介して接客したり、荷物を運ぶなどのサービスができます。 タブレットに映し出されたアバターが対応してくれ、受付業務を担当するほか、部屋やロビーのソファへ荷物を運んだり誘導してもらえます。実は、このロボットで会話しているのは、離れた場所にいるオペレーターです。ロボットの操作も、遠隔地からできるので、家にいながらホテルの接客をすることが可能になるといいます。 来場者は「時間的にわれわれの業界は不規則なところがあって、定着率も高いわけではない。家でもオペレートできるのであれば、新たな仕事のスタイルになる」と語り、このロボットを企画したUltimatrustの室井義貴さんは「まさに遠隔地で活躍できると思う」と話します。 しかし、リモートでは対応できない業務もあります。客室を清掃していたのは、やはり外国人スタッフ。ホテル業界の中でも特に人手不足が深刻なのが、ベッドメイキングなどの清掃業務だと言います。 清掃会社責任者の宮本圭輔さんは「日本人は採用でなかなか来てくれないという状況が続いている」と話し、ホテルの支配人も、客室清掃スタッフの慢性的な不足に危機感を抱いています。 「客室の清掃は一番肝になる部分だと考えている。やはりホテルは客室が商品。その商品が仕上がらないことには、ホテルの営業もできない」(ベッセルイン高田馬場駅前の大鋸渉支配人) 客室清掃のコンサルティングを行うクリーンネクストの西山貴代代表は、人手不足の解消には、清掃に対する教育や評価制度が重要になってくると話します。 「清掃の教育体制がしっかり確立している所が少ない。清掃の評価制度がないので、人が定着せず育ちにくい。どこまで頑張ったら、何部屋清掃したら、いくらになるのか。その頑張りが会社にどう評価されるかが、やりがいや意欲にもつながる。海外の人材も今後増えてくるので、日本人と平等に評価できるプログラムが必要になってくる」 ※ワールドビジネスサテライト

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