景気の悪い日本だが…「世界トップ」になる日本企業を実名公開する…! 超優良企業

これから世界一になる会社20

コロナ禍もあったからか、最近、日本のビジネスマンが海外で活躍しているというニュースをあまり聞かない。だが、世界の頂点を目指して闘う日本の会社はまだまだある。そして、今でも勝っているのだ。

その退潮ぶりが伝えられることが多い日本企業だが、「世界最強」は今でも確実に存在する。

反面、世界に変革をもたらす事業は評価されづらい。しかし、諦めずに歩を進めれば、いつか頂に到達できる。そう信じて愚直に研究開発に取り組む企業がある。それが装着型サイボーグ『HAL』を開発するベンチャー企業、CYBERDYNEだ。明治大学教授の小笠原泰氏は同社の先進性をこう話す。

「脳卒中などで身体の機能が低下しても、脳から身体へ送られる信号を読み取って動作を支援する同社の製品は高齢化社会で活用領域が増えていくでしょう。神経系の障害を持った人にとって、歩行機能の改善治療や立ち上がり支援など、HALは日常生活になくてはならないものになります。

日本では様々な規制が普及のネックとなっていましたが、今後は中国や東南アジアでも高齢化が始まり、需要は無限に広がっていくはずです」

同社社長の山海嘉之氏が語る。

景気の悪い日本だが…「世界トップ」になる日本企業を実名公開する…! 超優良企業

景気の悪い日本だが…「世界トップ」になる日本企業を実名公開する…! 超優良企業© 現代ビジネス

「歩行が不自由になった人の機能改善に効果のある医療用下肢タイプのHALは、実は日本より先に欧州での保険適用が進んでいます。’13年には脳・神経系の患者の身体機能を改善する効果が認められ、ドイツでは脊髄損傷の患者の治療に公的な労災保険が適用されるようになりました。

日本では、8つの神経筋難病を対象に治療効果が認められ、’16年に公的医療保険に収載されましたが、入院時の診療報酬には算定されなくなったため、使いにくいという現状がありました。しかし、昨年4月からALSや筋ジストロフィーといった難病で入院している患者の治療に用いられた場合、医療機関には診療報酬が加算されることになりました。医学会からの後押しもあり、研究は進んでいくと思います」

世界の「水危機」を解決

同社は現在、米国のリハビリ医療機関を買収し、現地での拠点を27ヵ所にまで広げている。

「これによって我々の最新のテクノロジーを展開できる場を手に入れたのです。次の新しい社会作りに必要なピースが集まり始めているという実感があります。テクノロジーを進化させ続けることで、これまで医学界で諦められていた疾患を持つ患者さんの身体機能を改善することができる可能性があることもわかってきました。HALの持つ可能性は大きく広がり、医療機関だけではなく、次世代の産業の創出という意味でも注目されるようになっています。将来は『健康未来社会』を実現したいですね」(山海氏)

人類が抱えるグローバルな問題を解決し得る企業はこれから世界一となるポテンシャルを秘めている。たとえば水問題だ。百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が言う。

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「水資源の枯渇は世界的な問題です。温暖化で氷河がなくなったり、砂漠化が進んだりすると、淡水がなくなり、水源はやがて海水に頼らざるをえなくなります。その時、問題解決の一助となる技術を持っているのが、東レです。同社の逆浸透膜を使って海水から塩分を除去し、淡水化できる。すでにアラブ首長国連邦や香港で、大型海水淡水化プラント向けの逆浸透膜を受注しています。

また、脱炭素の機運の高まりで、大量の二酸化炭素を排出する畜産が問題視されています。飼料として大量の穀物を消費していいのか、という問題もある。そこで需要が生まれるのは、代替肉です。たとえば、不二製油グループ本社の大豆を使った代替肉『大豆ミート』には長年の歴史があり、今後、世界的に注目されると考えられます」

農業、しかもさつまいもというニッチな分野で世界と勝負しようという会社がある。それが宮崎県串間市にあるくしまアオイファームだ。

世界で戦う日本の「さつまいも」

同社副社長の堀内翔斗氏が話す。

「私たちが手がけるさつまいもの輸出量は年間1200~1300tになります。そのうち8割がアジア向けですが、現在、力を入れて開拓しているのが北米や欧州、中東です。当然、古くからさつまいもが食べられている地域で、独自の食文化が確立されています。

しかし、日本のさつまいもは現地のものと差別化できます。現地で試食してもらうと、甘さや食感がまるで違うことが実感してもらえるのです。なぜかというと、海外にはさつまいもを熟成させる文化がない。試食会では『砂糖を加えているだろう』とよく言われますが、何も加えていないことを伝えると先方は驚きます。これは新しい価値観の創出ですよね。日本のさつまいもは世界で通用すると、さらなる新規市場の開拓に手応えを感じています」

Photo by gettyimages© 現代ビジネス

日本には強く面白い企業がたくさんあるのだ。

日本発の技術が世界のエネルギー事情をガラリと変えるかもしれない。その鍵となるのが、桐蔭横浜大学特任教授の宮坂力氏が発明したペロブスカイト太陽電池だ。

電気が日本の未来を背負う

「これは薄くて軽く、曲げることもできる太陽電池で、ソーラーパネルと違って設置場所を選ばずに発電することができます。積水化学工業は今年度から実証実験を行い、’25年に事業化することを目指しています。普及すれば、電気料金が一気に下がるポテンシャルを秘めた技術です。

また、電子部品製造装置メーカーのサムコは、ペロブスカイト太陽電池を作るための装置も作っており、普及するにつれて業績も上昇していくことでしょう」(経済アナリストの田嶋智太郎氏)

電力事情が好転すれば、EV(電気自動車)の普及にも弾みがつく。電気料金の他にEV普及のネックになっているのが、充電設備が少ないこと、そして充電に時間がかかることだ。

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政府はEV普及を後押しするために、’23年中にも規制を緩和して、高出力の充電器を設置できるようにすると発表した。そこで俄然注目を集めるのが、電力ネットワーク関連機器を製造する東光高岳だ。

「同社は今でも30分程度で8割ほど充電できるEVの急速充電器を販売していますが、規制が緩和されれば、数分で充電できる、より高出力の充電器を製造できるようになる。それだけの技術力がある会社です」(経済アナリストの中原圭介氏)

地球上の省エネルギーにも貢献

電子レンジなどに使われるマイクロ波を用いる製造プロセスを開発する大阪大学発のベンチャー企業、マイクロ波化学はエネルギー効率を劇的に改善させる夢の新技術を開発している。財産ネット企業調査部長の藤本誠之氏が解説する。

「素材を作る際に炉を用いて熱する工程がありますが、炉自体を高温にするためエネルギー効率が悪く、世界の電力消費の3割が炉を熱するのに充てられているといわれています。炉による加熱を同社の開発するマイクロ波に置き換えれば、エネルギー消費を大幅に減らせるはずです。

現在、同社は三井化学と組んで、炭素繊維を炉で熱するのではなく、マイクロ波による加熱設備に置き換える実証実験を行っています。成功すれば、約50%の消費エネルギーを削減できるといいます。

実用化されれば、世界展開できる技術のうえ、地球上の省エネルギーにも貢献できる。実に夢のある技術なのです」

東京工業大学発のベンチャー、つばめBHBは非上場企業ながら、ウクライナの復興支援に名乗りを上げた。

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「同社は安価な触媒を用いたアンモニア製造を実現した企業です。ウクライナのキーウ近郊にある都市ブチャと新たな暖房システムの構築に向けて基本合意を結びました。同社は再生可能エネルギーを用いてアンモニアを製造し、それを暖房設備の燃料に利用してもらおうとしているようです」(ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏)

いずれの技術も実用化されれば、確実に、世界に大きな変革をもたらす。

世界シェアトップの超優良企業10

すでに世界シェアトップに君臨する「最強の日本企業」も数多く存在する。前述のペロブスカイト太陽電池の主要な材料となるヨウ素関連企業もその一つだ。

「天然資源に乏しい日本ですが、実はヨウ素については、チリに次いで世界2位の生産量を誇ります。天然ガスが溶解した地下水からヨウ素を分離して生産する国内トップ企業が伊勢化学工業で、世界でも約15%のシェアを誇る屈指のヨウ素サプライヤーなのです。ヨウ素はレントゲンの造影剤やスマートフォンなどの液晶用偏光フィルムとしての需要が拡大しているほか、ペロブスカイト太陽電池の材料としても注目を集めています。

景気の悪い日本だが…「世界トップ」になる日本企業を実名公開する…! 超優良企業

景気の悪い日本だが…「世界トップ」になる日本企業を実名公開する…! 超優良企業© 現代ビジネス

なお、ヨウ素を生産する際には天然ガスが副産物として生産され、こちらもクリーンエネルギーとして需要が高まっています」(前出・深野氏)

他にも日本の高い技術力を背景に、高いシェアを誇る超優良企業はいくつもある。先端半導体向けの欠陥検査装置で市場をほぼ独占するレーザーテックや、車載用の高品質モーターコアで世界シェア4割を占める三井ハイテックなどは今後も技術的優位を保ちそうだ。

これから巻き返しを図る企業も

「エアコンで世界トップクラスのシェアを誇るダイキン工業は、世界各地で存在感を見せています。とくにヨーロッパではロシアから天然ガスが輸入できなくなり、省エネが大きなテーマとなっている。そこで、同社の冷暖房システムの採用が広がっているし、今後はウクライナの復興で採用されることも期待できます。最低投資金額が約270万円と高いのですが、東証は投資単位の引き下げに取り組んでいるため、株式分割に期待したいところです」(深野氏)

 EV向け先端部材でも日本企業の躍進は著しい。トヨタ系の自動車部品メーカー、デンソーはEVやハイブリッドカー向けのインバーター(電力変換器)で世界シェアトップを誇る。また、半導体パッケージ基板で高いシェアを誇るイビデンは、今年度からEV向けバッテリー部材を本格展開し、5年後に売上高100億円を目指すと宣言した。欧米や中国に遅れを取ったEV事業で、日本企業が巻き返しを図る。

景気の悪い日本だが…「世界トップ」になる日本企業を実名公開する…! 超優良企業

景気の悪い日本だが…「世界トップ」になる日本企業を実名公開する…! 超優良企業© 現代ビジネス

「EV関連事業で見落とされがちなのが、車体の軽量化技術です。EVはバッテリーが大型のため、ガソリン車よりも車体が重いことが問題とされてきました。そこで注目したいのが、リョービです。かつては釣り具を作っていたので、ご存知の方も多いかもしれません。現在、同社はアルミニウム合金などを鋳造するダイカスト専業の自動車部品メーカーとして、世界トップクラスです。

足元でも、半導体不足から低迷していた自動車生産の復調で業績は好転しており、今後もEV向けの軽くて丈夫なアルミダイカスト製品の販売で増収増益が期待できる。にもかかわらず、PBR(株価純資産倍率)は0・36倍と低く、株価は割安で放置されているといえます」(前出・田嶋氏)

世界首位級のタイヤメーカーであるブリヂストンや、工場の自動化に欠かせないNC装置製造で世界トップクラスのファナックなど、超優良企業は数多い。日本には新時代を切り開く底力がまだまだあるのだ。

「世界最強」の日本企業はまだまだ存在する。後編『5年後に「株価が上がる」超優良の日本企業を実名公開する…!』では「未来の利益率で読む有望企業20」、「プロが厳選する「5年後に儲かる株」40」を紹介する。

「週刊現代」2023年6月3・10日号より

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