2019年も残すところ1カ月を切った。12月は1年で最も忙しくなる時期だ。
企業にとって12月は従業員への冬のボーナス(賞与、一時金)の支給のほか、取引先への支払いなどがかさむ時期。無事に年が越せるかと気をもんでいる企業経営者や経理担当者もいるだろう。
一般家庭だけでなく、企業もお金がなければ破綻する。そんな企業の財務健全性を示すのがネットキャッシュだ。現預金と短期保有の有価証券の合計額から、有利子負債と前受金を差し引いて算出する。企業の実質的な手元資金であり、多いほど財務安全性が高い。
東洋経済オンラインは約3700社以上の上場企業の直近本決算をベースにネットキャッシュを割り出し、上位500社をランキングにした。例年同時期に同じ内容のランキングを公表しており、その最新版だ。
■ソニーが二連覇、ネットキャッシュは1兆4351億円
1位はソニーの1兆4351億円(前年1兆4178億円)。直近の2019年4~9月期連結決算は3年連続で営業利益が過去最高を更新した。売上高は前年同期比で減ったものの、営業増益となった。ただ、ゲーム事業でPS4の減速などもあり今2020年3月期の業績予想は営業減益を見込んでいる。
今後のキャッシュの使い道は画像センサーなどの半導体事業の設備投資だ。2021年3月期までに7000億円規模の投資をする予定で、2021年度には長崎県に1000億円規模を投じた新工場も稼動させる見込みとなっている。
2位は任天堂の1兆0829億円(前年9879億円)。2012年3月期や2014年3月期は数百億円レベルの赤字を出したが、今年は新型の家庭用据え置き型ゲーム機「Nintendo Switch」の大型タイトルや、新しい「Switch Lite」が貢献した。
11月15日に世界同時発売された「ポケットモンスター ソード・シールド」はニンテンドースイッチソフトとして史上最速・最多の全世界600万本の初週販売本数を達成。ポケモン効果もあり当面は安定した高水準の利益が見込まれ、今後はさらにキャッシュを積み上げることが予想される。
3位は信越化学工業の1兆0274億円(前年は1兆363億円)。塩化ビニル樹脂、半導体シリコンウエハで世界首位、ケイ素樹脂、フォトレジストなどの材料も手がける化学メーカーだ。足元での市況下落でシリコンウエハの採算悪化懸念もあるが、強力な事業ポートフォリオを持つ同社への評価は高まっている。以下は6位キーエンス、7位SUBARU(旧・富士重工業)、8位ファナック、9位京セラ、10位ファーストリテイリングなど業績も堅調な優良な企業が続く。
覚えている人も少なくないかもしれないが、2008年秋のリーマンショック時に頻発したのが「黒字倒産」だ。決算上の業績は黒字なのに資金繰りが急速に悪くなった企業が何社も倒産した。逆にいえば、本業がいくら赤字であってもキャッシュが回り続けていれば、企業が潰れることはないということ。手元資金を厚くしておくことは、企業経営者や財務・経理担当者にとって安心できることでもある。
一方で、ネットキャッシュが積み上がっていることだけを単純に喜べない。成長のための投資や株主への還元という意味で、手元資金を持て余しているという見方もあるからだ。財務が健全だから、すべてが順調とも限らない。それでは今年のランキングを見ていこう。
東洋経済オンライン編集部