「自炊」とは、「自分で食事をつくること」だが、最近は「自分で本や雑誌を電子書籍化すること」を表す俗語として使われている。今回の話題は、「自炊する一人暮らしの男が増えている」ではなく、「自分で電子書籍化する自炊とはなんぞや?」だ。
「電子書籍」とは、紙の印刷物である本や雑誌ではなく、書籍データ(ソフトウェア)を電子機器(ハードウェア)で表示して読むもの。
表示するハードは、パソコン、携帯電話、専用端末(電子ブックリーダー)などがある。今年発売されて話題になったiPadは、まさに電子書籍を表示するにはぴったりのアイテムだ。
コンテンツである書籍データ(ソフト)は、インターネットからダウンロードして入手するのが一般的。有料のもの、無料のもの、どちらもある。
しかしながら現状では、電子書籍のコンテンツは少なく、読みたい本が印刷物でしか売られていない場合が多い。そうなると、自分で本を電子化するしかない。また、自分が持っている本や雑誌を電子化して処分すれば部屋は片付くし、たくさんの本を端末で持ち運べばいつでも読めて一石二鳥。
というわけで、自分で買ってきた本やマンガや雑誌を電子化する「自炊」が流行っているわけだ。
では、「自炊」は実際にはどのようにやるのか?
電子化するには、本の各ページをスキャナで取り込みデータ化する必要がある。1ページずつ本を開いて原稿台のガラスに押し付けてスキャン……。なんて面倒なこと実際にはやってられない。
「自炊」の主流の手法は、大胆にも本を裁断し、バラバラになった本を自動原稿送り装置(ADF)搭載のスキャナで一気にスキャニングする方法。そのため、自炊グッズとして必須なのが「裁断機」と「ADF付きスキャナ」。後者は、複数の書類を自動で一気にスキャニングできる「ドキュメントスキャナ」タイプが人気だ。
スキャンしたら、PDFファイルにまとめて、“電子書籍”になる。スキャナのドライバや付属ソフトで自動的にPDF化されるものも多い。
なお、このPDFファイルの扱いについては、色々注意が必要。個人や家族で利用する分には問題はないが、他人に譲渡することは基本的に違法になる。
スキャナさえ買えば、誰でも自分でできるので、「自炊」なわけだが、裁断やスキャニングはやはり面倒……。
というわけで、「自炊」を「代行」する業者も現れている。「自炊代行業者」に本を送付すれば、PDFファイル化してくれるサービスだ。また、スキャニングして不要となった、裁断されたバラバラの本をオークションに出すといったことも、最近増えている。
しかしながらこれらの行為は、違法とも、適法とも、現時点では色々な見解が出ていて、事実上の“グレーゾーン”状態。
ただ、「自炊」自体は違法ではない。普及が始まったスマートフォンを最大限に利用するためにも、賢い「自炊」に、あなたもトライしてみてはいかがだろうか?
(もがみ)