野田聖子地方創生相(61)の夫・野田文信氏が、過去に暴力団員だったなどと報じた「週刊文春」の記事は事実無根で名誉を傷つけられたとして、発行元の文藝春秋に1100万円の損害賠償を求めていた訴訟。最高裁判所第一小法廷は8月8日、文信氏の上告を棄却。文信氏が元暴力団員と報じた点について、「真実である」とする東京高等裁判所の判決が確定した。
野田氏は昨年10月に発足した岸田政権で、地方創生相として入閣を果たした。本会議場のひな壇の席次は“ナンバー2”とされる演壇の右側で、首相不在時の臨時代理の順位も松野博一官房長官に次ぐ2位。少子化担当相も兼務する野田氏は、首相の目玉政策の一つ、「こども家庭庁」の設置(来年4月に発足予定)も主導してきた。
「今でも、自身のHPでは、『私は「日本初の女性の内閣総理大臣」を目指しています』と記しています。6月12日放送の「NIKKEI 日曜サロン」(BSテレ東)では、次期自民党総裁選への出馬意欲を問われ、『いつも目指している』と答えていました」(政治部記者)
“元暴力団員だった事実はない”として発行元の文藝春秋を提訴
一方、「週刊文春」は2018年8月2日号で、文信氏が「会津小鉄会」傘下の「昌山組」に所属する暴力団員だったことなどを報道。文信氏は元暴力団員だった事実はないなどとして、東京地方裁判所に発行元の文藝春秋を提訴した。
裁判の過程で、「週刊文春」は、文信氏が昌山組に所属していたことを示す「暴力団個人ファイル」と題された警察庁の内部文書などを証拠として提出。その結果、東京地裁は2021年3月、文信氏が元暴力団員だった点について、真実相当性があるとする判決を下している。文信氏は判決を不服として控訴、「週刊文春」も一部判決を不服として控訴した。
総裁選に出馬した野田氏は昨年9月20日、地方議員とのリモート会議で、夫の訴訟に関して「私は夫を信じている」などと発言。さらに、9月22日には、自身のブログで<「文春」が根拠としている警察庁のデータベースについては、夫が文春を名誉毀損で訴えた裁判の判決において、証拠として全く信用されなかった怪文書>などとし、報道が事実無根であることを強調していた。
高裁の決定に一転、「訴訟の当事者ではない」と回答を拒否
だが、東京高裁は今年2月3日、以下のような判決を下した。
<警察庁幹部への取材結果等を総合すれば、1審原告が過去において京都の指定暴力団「会津小鉄会」傘下の「昌山組」に所属していたことは真実であるというべきである>
1審では、文信氏が元暴力団員という点について「真実相当性がある」とする判決だったが、控訴審では「真実である」とする判決になっている。
野田氏は高裁判決が出た直後、「週刊文春」の取材に、次のように回答していた。
「訴訟の当事者ではないので、回答する立場にありません」
最高裁で確定した「夫・文信氏が元暴力団員」という事実
それまで「夫を信じている」と語り、「週刊文春」が提出した証拠についても「怪文書」と断じていた野田氏。ところが、高裁判決が下ると一転、夫の訴訟に関して「当事者ではない」と回答を拒んでいた。しかし、森友問題における安倍昭恵夫人の例からも明らかなように、最高権力者の配偶者は国政にも影響を与え得る立場。他方で、元暴力団員などへの厳しい監視は、野田氏ら国会議員が可決した暴力団対策法に基づき、政府が強く推し進めてきたものだ。そうした中で、今回、最高裁が文信氏の上告を棄却し、野田氏が否定してきた文信氏が元暴力団員だった事実が確定したことになる。
8月10日に実施される内閣改造・党役員人事を巡っては、内閣ナンバー2の野田氏の続投も焦点の一つだ。岸田政権は統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係を巡り、「社会的に問題が指摘されている団体との関係には、政治家として十分に注意しなければならないのは当然だ」(松野博一官房長官)として、点検を指示している。野田氏の夫が、反社会的集団とされる暴力団の元組員だったことが裁判で認定されたことで、野田氏がどのような説明をするのか、注目される。
(「週刊文春」編集部/週刊文春)