消費に回復の兆しがある半面、景気の牽引(けんいん)役だった生産に一服感が出てきた。大田弘子経済財政担当相は16日、景気の現状判断を「生産の一部に弱さがみられるものの、回復している」とした4月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。「消費に弱さがみられるものの、回復している」から表現を変更した。基調判断そのものは5カ月連続で「回復している」に据え置いたとはいえ、景気の方向感が定まらない。
内閣府は昨年夏からの個人消費の弱含みの動きが持ち直し、底を打ったとの見通しを示した。ただし、大田担当相は閣僚会議後の記者会見で、「暖冬の影響が2月になってプラス面に働いている。賃金自体はまだ伸び悩んでおり、今後、この消費が力強い動きになるかは定かではない」と分析した。
項目別の景気判断をみると、消費が1年8カ月ぶりに上方修正された半面、住宅建設と生産、企業の業況判断の3項目は下方修正された。
消費が好調だったのは、衣料品など春物関連商品の売れ行きが好調だったほか、旅行、外食などが伸びたため。雇用情勢も改善しており、内閣府は先行きについて明るい見通しを示している。
大手スーパー、イオンの岡田元也社長も「景気は非常に順風になってきている」と指摘、消費の現場からも明るい声が聞こえ始めた。消費は国内総生産(GDP)の5割以上を占めて景気回復の鍵を握るが、「本格回復とは言い切れない」(内閣府)のは依然、賃金が低迷しているからだ。
好調な企業業績が従業員の賃金に跳ね返り、所得が増えた消費者が財布のひもを緩める-。政府はこうした景気回復のシナリオを描いてきた。
だが、内閣府は、企業業績は好調にもかかわらず、賃金が伸び悩む背景を十分に分析しきれていないのが実情だ。
加えて、懸念材料も新たに表れた。これまで景気を引っ張ってきた企業活動に、微妙な変化がみえてきた点だ。
IT(情報技術)関連製品の伸びが鈍化し、生産は2年4カ月ぶりに下方修正された。「確かに需要は若干弱まったが、決して悪くはなっていない」(電機大手)と先行きを楽観する声は強いものの、下ぶれするのではとの心配も出てきた。
先行きには回復の予測が出ている。だが、この日の閣僚会議で、自民党の中川秀直幹事長は景気動向指数が2カ月連続マイナスとなっていることを挙げ、「楽観的にならず、十分注意するように」と大田担当相にくぎを刺す場面もあった。
方向感のみえない景気が今後、上向きに進むのか、それとも、下振れするのか。景気の不透明感が増す中で、政府は景気の先行きを慎重に見定めようとしている。
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