日米など5カ国が米ハワイ島に建設しようとしている世界最大級の天体望遠鏡「TMT」が、聖地であるマウナケア山の景観や環境を破壊しかねないとして、建設に反対する住民らが道路を封鎖する騒ぎになっている。非常事態宣言も発令され、日本のすばる望遠鏡を含む山頂の望遠鏡すべてが観測中止に追い込まれた。収束の見通しは立たず、科学の発展と地元の理解をどう共存させるか、知恵が試されている。
【写真】超大型望遠鏡「GMT」のイメージ=GMTO Corporation提供
観光客でにぎわうオアフ島と違い、火山や熱帯雨林の自然豊かなハワイ島で今月17日、住民33人が逮捕される混乱があった。望遠鏡が建設されるマウナケア山山頂への唯一の道路に数百人が座り込みを始めて3日目。現地メディアによると、ハワイ語で「クプナ」と呼ばれる長老も逮捕されて抗議が激化。デービッド・イゲ州知事は非常事態宣言を発令した。その後も参加者は千人以上に増え、オアフ島のホノルルでもデモ行進があった。
すばる望遠鏡など山頂に13基ある望遠鏡は、職員が向かえずいずれも観測中止に。緊急時のメンテナンスだけ住民の許可を得て通してもらっているという。現地に滞在する国立天文台ハワイ観測所の吉田道利所長は取材に「収束の見通しはまったく分からない」と答えた。