<熱中症予防には朝の味噌汁>こんなツイートが話題です。お味噌汁ってそんなに万能なんでしょうか。大学の家政学部管理栄養士養成課程の専門家に聞くと、答えはイエス。ただし、味噌汁だけで熱中症が防げる、という“おいしい話”ではないようで。
■あくまでも「手段の一つ」
食品分析学が専門の神戸女子大学(神戸市須磨区)の木村万里子准教授に聞きました。
ー熱中症には朝の味噌汁が効果的と話題です。
「味噌汁のメリットは、やはり水分とミネラルが同時に摂取できるところだと思います。人間は寝ている間に、約コップ1杯分の汗をかくといわれています。体内の水分が失われた状態で、朝食抜きのまま活動すると、脱水気味になります。味噌汁には、ナトリウム、カリウム、マグネシウムといった発汗により失われる主要な電解質が多く含まれています。味噌汁を食べることで、失われた成分を速やかに補給することができます」
ー体内でも水は作られると聞きました。
「代謝水のことですね。代謝水は三大栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)からエネルギーが生成する過程で生じる水(平均1日300ml)なので、味噌汁というよりも朝食をしっかり食べることで、その効果を期待できるものといえます」
ー残暑厳しく、朝から熱い味噌汁は少し抵抗があります。スポーツ飲料で代用はダメですか。
「スポーツ飲料と味噌汁とは、用途が全く違います。スポーツ飲料は、スポーツ時の水分、ミネラル、カロリー補給が目的で作られたものですので、食事と混同してはいけません。最近のスポーツ飲料には、人工甘味料を使った低カロリーのものがあり、エネルギー源にもなりません」
ー朝食抜きと熱中症が同時に防げると思ったのですが。
「スポーツ飲料は、味噌汁やご飯などの食事とは栄養学的にまったく異なるので、朝ご飯の代わりにするのは危険です」
ーがんばって味噌汁を作ります。おすすめの具材はありますか。
「野菜、イモ類、海藻、キノコ類など、具だくさんが理想的です。これらの食材には、カリウム、マグネシウムなどが多く含まれています。また、豆腐や厚揚げなどの大豆加工食品には、ミネラルに加えて良質のたんぱく質が多く含まれており、疲れた筋肉を回復させるために有効です。その他、カボチャは抗酸化作用のあるβ-カロテン(ビタミンA)、ビタミンC、ビタミンEを豊富に含むため、熱中症予防ににぴったりの食材だと思います。また、豚肉は、良質なたんぱく質源であると同時に、糖質をエネルギーに変換するために必須な栄養素であるビタミンB群を多く含み、味噌との相性も良いので、ぜひ利用してほしい食材です」
ーなるほど。
「でも、朝に1杯の味噌汁を食べたからといって、熱中症予防の効果が1日中持続するわけではありません。朝の脱水症状を解消する手段の一つ、という程度です。日中も水分や塩分の補給は欠かさないようにしてください」
■自分自身でもチェックを
熱中症はわずか30分で発症するともいわれています。環境省の熱中症予防情報サイトでは、熱中症の予防方法として、涼しい服装/日陰を利用/日傘・帽子/水分・塩分補給を挙げています。また同省発行の「熱中症環境保健マニュアル2018」の中にある、運動・仕事の前のチェックリストには、「朝食は食べたか」を確認する項目もありました。
朝食抜きよりは味噌汁1杯で塩分や栄養補給を、さらに理想的なのは栄養バランスのとれた朝ご飯を。チェック項目を参考に、残暑を乗り切りたいですね。(ネクスト編集部 金井かおる)