朝日川柳が大炎上…死してなお強まる「VS安倍氏」の抗争 言論の自由めぐる場外戦に発展

参院選の街頭演説中に銃撃され、非業の死を遂げた安倍晋三元首相(享年67)について、岸田文雄首相が今年の秋に国葬を行う方針を発表したことに賛否が分かれるなか、朝日新聞の名物企画「朝日川柳」で、安倍氏の死を冷やかしたともとれる川柳が立て続けに掲載され、炎上している。長きにわたって続いてきた「朝日VS安倍氏」の抗争は、安倍氏が死してなおピリオドを打つ様子はない――。

 物議を醸したのは、16日付の朝日新聞に掲載された「朝日川柳」だ。「疑惑あった人が国葬そんな国」「利用され迷惑してる『民主主義』」「死してなお税金使う野辺送り」「忖度はどこまで続く あの世まで」「国葬って国がお仕舞(しま)いっていうことか」「動機聞きゃテロじゃ無かったらしいです」「ああ怖いこうして歴史は作られる」と、選出された7作品すべてが安倍氏関連だったのだ。

 前日の15日付でも、安倍氏に関するものが7作品中4作品あった。「銃声で浮かぶ蜜月政と宗」「銃弾が全て闇へと葬るか」「去る人の濁りは言わず口閉ざす」「これでまたヤジの警備も強化され」と旧統一教会との関連や警察の警備を風刺する内容だった。

 川柳は一般から募集し、両日とも選者名は「西木空人」。これは天声人語などを執筆していた元朝日論説委員で、コラムニストの栗田亘氏だ。

 ネット上では「川柳にかこつけて安倍氏を冒とくしている」「人の生死をもてあそぶ川柳など悪趣味」「朝日は赤報隊に襲撃され、亡くなった記者が揶揄されたらどう思うのか?」などと朝日への批判が殺到した。

「表現の自由が守られる我が国では、こんな安倍元総理の暗殺をあざ笑うかのような言論でさえ許されている」と三谷英弘衆院議員をはじめとした自民党の議員が相次いで異を唱え、日本維新の会の音喜多駿政調会長もブログで「いかなる表現や言論にも自由はあるものの、個人サイトではなく、伝統ある全国紙が掲載する川柳がこれなのかと…」と絶句した。

 脳科学者の茂木健一郎氏はブログで「言論の自由は大切で、このことで批判しようとは思わない」と前置きしたうえで、「文章も結論も、随分硬質で、視点も、庶民とか世間というよりもちょっと上に置いているように思う。そこには川柳はあるのかなと思う」と投稿した。

 朝日と安倍氏はバトルを繰り広げてきた長い歴史がある。第2次安倍政権発足後、朝日の安倍氏への批判は過熱し、安倍氏が国会答弁で「安倍政権打倒は朝日新聞の社是」と発言すれば、トランプ大統領との初会談時には「あなたはニューヨーク・タイムズに徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれたが、勝った」とジョークを飛ばしていたほどだ。

 今回の川柳も、両者の因縁関係の延長線上ではあるものの、主に保守陣営から朝日への批判が殺到した中、擁護派は「あくまで国葬への批判だ」「表現、言論の自由」を盾に反撃した。

 タレントのラサール石井が「こんな川柳が生まれるのは国が健康だということ。ユーモアも風刺も封殺する国は滅ぶ」とツイートすれば、れいわ新選組の大石晃子政審会長は「川柳キレッキレやな」と投稿したが、国会議員や識者関係で、川柳に賛同する声はごく少数にとどまった。

 ネット上では「#朝日新聞を廃刊に」「#表現の自由」がツイッターで、トレンド入り。朝日のスポンサーへの不買運動を求める声も出るなど大きな怒りを買い、この3連休は大炎上となった。

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