朝日新聞、「張本智和」誤報で協会出禁に

日本男子でナンバーワンといっても、まだ14歳の少年である。大新聞に礼儀を知らない奴だと書かれては張本智和選手も立場がないだろう。怒った日本卓球協会が朝日新聞を記者会見から締め出した一幕とは。

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桜も満開を迎えた3月30日の夕方、日本卓球協会では、平野美宇選手のエリートアカデミー修了とプロ宣言を発表した。が、記者たちの関心を引いたのは会見のペーパーにあった一文である。

〈朝日新聞デジタルの取材及び本件報道はご遠慮申し上げます〉

いったい、何をやらかしたのか。運動部のデスクが言う。

「卓球協会が問題にしたのは、ニュースサイト『朝日新聞デジタル』に掲載された3月10日の記事です」

その記事は、すでに訂正されているが、当初はこう書かれていた。

握手していた

〈日本卓球協会の宮崎義仁・強化本部長は10日、「日本代表の選手らに対し、試合時のマナーについて注意喚起をした」と明らかにした〉

そこで実際の例として、

〈1月の全日本選手権の男子シングルス決勝では、優勝した張本智和(エリートアカデミー)が、試合終了後に対戦相手の水谷隼(木下グループ)と握手せずに、ベンチに駆け寄った。この点について、協会は張本を注意した〉

これにすぐ反応したのがSNSである。そこでは「張本批判」が相次いだという。

〈相手を馬鹿にするようにでかい声出したりとか卓球の偉い人から注意されて当然だよ お前のそーいうところが水谷選手と違うところなんだよ〉

折しも記事が出た当日は、カタール・オープンのシングルス準々決勝で、張本はライバルのカルデラノに0―4で惨敗。試合後、本人は泣きに泣いて悔しがっていたという。

翌日に「書き換え」

ところが、朝日の記事は誤報だった。試合(1月21日)では、優勝の瞬間、張本はコーチの父親に駆け寄ったものの、すぐに水谷と握手を交わしている。

張本選手の母・凌さんも言うのだ。

「親としてはこんな記事は見たくありません。智和は水谷選手とちゃんと握手していますよ」

記事に登場する宮崎強化本部長によると、

「あの記事は、張本が握手しなかったと卓球協会がレクチャーしたかのように読めるので、我々まで批判されたのです」

卓球協会の抗議に、朝日は翌日「握手」があったと訂正したが、記者会見からの締め出しは、そのペナルティというわけである。

そこで、朝日新聞社に聞くと、なぜか間違ったわけではないと言わんばかり。

「弊社の担当記者は日本卓球協会の説明に即して記事を書きました。その後、同協会などから指摘があり、記事と見出しを一部修正・加筆しました」(広報部)

「書き換え」で済ませられるのなら、財務省もこんなピンチにならなかったのに。

「週刊新潮」2018年4月12日号 掲載

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