朝日記事は中韓国内の問題から目を逸らさせるために使われる

朝日新聞は2月11日に「売れるから『嫌中憎韓』」という特集記事を掲載した。ようは日本の出版界が売れるからという理由で中国、韓国に対する悪感情を煽っているというのだ。しかし問題は朝日の報道姿勢にあるのではないか。作家の井沢元彦氏が解説する。
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 朝日は「嫌中憎韓」などという言葉を使うが、週刊誌や書籍による中国・韓国への批判は、決してそんな扇情的なものではない。
 中国は尖閣諸島への領海侵犯を繰り返しており、これは日本がきちんと対処しなければならない問題のはずだ。あるいは、韓国はたとえば対馬から仏像を盗んでそのままにしている。これも、日本として毅然と対応すべき問題だが、どちらも朝日に言わせれば、「嫌中憎韓を煽る記事」になってしまう。それはおかしい。
 むしろ問題は、これまでの朝日新聞の報道姿勢のほうだ。朝日は日中友好、日韓友好の旗印のもと、これまでそうした現実から目を逸らそうとしてきた。朝日が問題視する扇動報道よりも、朝日自身の偏向報道のほうが明らかに悪質である。
 朝日新聞は、正確で的確な情報を国民に提供し、民主国家の主権者である国民が正しい判断ができるように支援するという、報道機関の基本原則あるいは倫理を決定的に踏み外している。
 その典型が、私が戦後日本の新聞史上「最低最悪」だと考える「読者と朝日新聞」(1982年9月19日付)だ。筆者は当時の東京本社社会部長である。この頃、文部省の教科書検定において歴史教科書中の「中国への侵略」という文言が「進出」に書き改められたと新聞・テレビ各社が一斉に報じ、その1か月後に中国政府から抗議があった。
 朝日ばかりでなく、すべてのマスコミが中国の代弁者と化し、これはけしからんと国と文部省を責め立てた。だが、後にこれは誤報であることが明らかになった。
 問題はそのあとの対応である。この記事は朝日の読者からの「本当に誤報だったのですか?」という質問に答えている。
〈今回問題となった個所については、当該教科書の「原稿本」が入手できなかったこと、関係者への確認取材の際に、相手が「侵略→進出」への書き換えがあったと証言したことなどから、表の一部に間違いを生じてしまいました〉
 社会部長という現場の総責任者が、取材相手に責任転嫁している。こんな言い訳が通用するわけがないだろう。こうしたごまかしを繰り返してきたのが、朝日なのだ。
 かつては中国の文化大革命を手放しで褒めていたのに、虐殺と飢餓で何千万人という人々が犠牲になったことが分かってくると、毛沢東主義については何も言及しなくなった。過去の記事を訂正するのではなく、ただ言わなくなっただけだ。靖国参拝問題をことさらに煽り立て、中国に提供したのもそうだ。
 韓国の朴正熙(パク・チョンヒ)政権、いまの朴槿惠(パク・クネ)大統領の父親の軍事政権時代には、北朝鮮については礼賛する一方、韓国には否定的だった。しかしこれも、拉致問題が明るみに出るや、手のひらを返したように朴正熙政権を評価し出した。
 こうしたごまかしを繰り返した結果、慰安婦問題や南京問題のような捏造やデマが、中国や韓国に利用されるようになった。両国が抱える国内問題の矛盾から目を逸らすための反日に、朝日は使われているのだ。
 自分たちの「正義」の誤りを認められない朝日は、「嫌中憎韓」を批判するより、自己を反省すべきではないか。
※週刊ポスト2014年3月7日号

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