木造住宅の新築購入者に価格の一部を還元する林野庁の木材利用ポイントが、東日本大震災の被災地で浸透してきた。地域林業振興を目的に昨年4月に導入し、3月までの実施期間を9月まで延長した。住宅着工数に占める利用割合はまだ1割程度で、地元木材業界は一層の周知を求めている。
制度は、新築住宅の柱や梁(はり)などに地元材を半分以上使った場合、1棟に30万ポイント(1ポイント1円相当)を還元する。震災で半壊以上の住宅被害に遭った被災者には20万ポイントを加算し、さらに内装・外装に木材を使えば30万ポイント以下の還元がある。被災地では最大80万ポイントが付与される。
岩手、宮城、福島各県では、申請を開始した昨年7月の利用は2~6件と低調だった。その後は徐々に増え、12月だけで宮城110件、福島85件、岩手74件に上った。
林野庁は「制度の認知度が上がっており、今後さらに利用は拡大する」と予測し、制度の延長を決めた。
ただ、3県の住宅着工数全体に占める割合は1割程度と低迷する。宮城県の窓口となる県木材協同組合の担当者は「中小の建築業者は細かな書類作成に慣れておらず、申請手続きの煩わしさから敬遠する業者もある」と説明する。
林野庁は「書類は不正を防ぐ最低限の内容に絞っており、これ以上の簡略化は難しい」と理解を求める。
制度に詳しい東大大学院の安藤直人特任教授(木材構造学)は、「建築業者や資材が不足している被災地では、9月までに手続きが間に合わないケースが想定される。制度の効果を上げるには3年程度は続けるべきだ」と指摘した。
[木材利用ポイント] 地元木材の利用促進を目的に林野庁が2013年4月に導入した。各都道府県の木材協同組合などから委託を受ける木材・建築業者の窓口に申請書を提出する。ポイントは木製品や地域の農林水産品、商品券などと交換できる。