未成年との「真剣交際」って? 大阪府青少年条例めぐる奇妙な議論

18歳未満に対するわいせつ行為を規制する大阪府の「府青少年健全育成条例」(昭和59年施行)の改正案が、2月府議会に提案される。会員制交流サイト(SNS)を通じた現代の性被害に適用できるよう、対象が狭すぎると批判されてきた規制の網を他の都道府県と同レベルに拡大するのが改正の柱だ。だが、一部で「真剣交際以外は違反」と報道されたことで、世間の注目が「真剣交際とは何か」に集まる想定外の事態に。府は「未成年を守るという改正の趣旨が理解されない」と危機感を抱いている。

 ■無知と過信を利用

 「家出中です。泊めていただける方いませんか?」

 「やさしいパパさんお待ちしてます。1時間7千円 性行為× キス×」

 SNSには小中学生や高校生のこんな投稿があふれている。見ず知らずの大人との接触を恐れない彼女たち。見え隠れするのは年齢ゆえの無知や、ネット情報に対する過信だ。その隙は下心を持った大人に簡単に利用される。

 警察庁によると、令和元年にSNSを通じて事件の被害者となった18歳未満は過去最多の2095人。スマートフォンが普及し始めた10年前の1・8倍に増加した。

 ■違法と合法の線引き?

 府の現行条例は、未成年を「脅したり嘘をついたりして」行った性的行為に限って禁じている。これは全国の同様の条例に比べ規制対象が限定的で、府外なら処罰できる事案も、府内では事件化できない現状があった。

 そこで改正案は大多数の都道府県に合わせ、「青少年の未熟さに乗じた」性的行為や「単に自分の性的欲望を満足させるため」のわいせつ行為も禁じた。

 実は、府の改正案には「真剣交際」の言葉はどこにも入っていない。では、なぜこの言葉が報じられ、ネットなどで話題になったのか。

 発端は府が昨年12月~今年1月に行った改正案へのパブリックコメント(意見募集)の説明文だ。府はこの中で、「真摯(しんし)な交際関係での性行為は規制対象ではない」と説明。これが「真剣交際以外は違反」と伝えられることになった。

 この府の説明は「淫行」の定義をめぐる昭和60年の最高裁判決を踏まえたものだ。判決は「婚約中の青少年やこれに準ずる真摯な交際関係」の性行為は処罰対象にならないと判示。実際、他の都道府県条例もこの解釈で運用されている。

 だが、インターネット上では真剣交際の定義づけが始まり、「交際中は真剣でも別れて恨みに変わった場合は?」など違法と合法の線引きが議論されるように。府は「条例に真剣交際という言葉はない」として正しい理解を求めている。

 ■居場所づくりを

 SNS時代における「被害者」としての未成年の実像も、正確にとらえる必要がある。

 世間では、冒頭の家出少女やパパ活のように未成年側から接触を図り被害に遭うケースについては、事件化することに否定的な意見もある。実際に条例改正を提言した府の審議会でも、一部の委員から「未成年から働きかけた場合は処罰対象とすべきではない」といった意見も出た。

 だが、生きづらさを抱える10~20代の女性を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」の橘ジュン代表は「悪いのは子供を利用して弄ぶ大人。処罰することで子供にもそれを気づかせる必要がある」と訴える。未成熟な段階で欲望の対象として弄ばれた経験は深い傷となり、その後の成長に大きく影響するからだ。

 警察庁の平成29年統計では、被害児童が被疑者に会った理由は「金品目的」に次ぎ「優しかった、相談にのってくれた」が多かった。橘さんは「彼女たちは『さみしい』とよく言う。家や学校に居場所がないから、一緒にいてくれて、自分を肯定してくれる人をSNSで見つけようとする」と指摘。府は被害防止に向け、スマホの危険性を教える出張授業など教育に力を入れるが、橘さんは「本当に必要なのは居場所づくり。大人が真剣に考えないといけない」としている。

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