本当にはやった?12月1日発表の新語・流行語大賞どれに

年末の風物詩「現代用語の基礎知識選 2020ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞とトップテンが12月1日に発表される。3密、ソーシャルディスタンス、テレワーク…。今年は新型コロナウイルス関連が続々と候補に入り、世相の反映がうかがえる。一方、例年巻き起こるのが選出の是非をめぐる議論。「聞いたことがない」「恣意的(しいてき)では」。こうしたギャップの背景には、インターネットの台頭などで多様化する情報の形や価値観、ライフスタイルがあるようだ。

 コロナ関連多く

 昭和59年に創設された同賞。賞事務局によると、主催する自由国民社(東京)が発行する「現代用語の基礎知識」編集部が、その年に話題となった100語程度をピックアップし、選考委員が採点・協議する。例年11月上旬には候補となる30語が絞り込まれ、最終的に委員が年間大賞とトップテンを決める。

 現在の委員は、東京大名誉教授の姜尚中(カンサンジュン)氏や杏林大教授の金田一秀穂氏ら7人。賞事務局は「(委員に)任期はなく、バランス感覚のある人を選んでいる」と説明する。

 今年は候補の多くを新型コロナ関連が占めたほか、人気ドラマの半沢直樹にちなんだ「顔芸/恩返し」や記録的ヒットが続く「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」など社会現象になった言葉も順当に選ばれた。

 ただ、候補にさまざまな意見があるのも事実だ。

 物議醸すケースも

 例えば「第4次韓流ブーム」。SNSでは《第2次と第3次はいつあったのか》と定義を疑問視する人もいた。日本学術会議に関し、菅義偉(すがよしひで)首相が会員任命拒否の理由に挙げた「総合的、俯瞰(ふかん)的」には《どこではやったのか?》。お笑い界関連の「時を戻そう」(ぺこぱ)や「まぁねぇ~」(ぼる塾)には好意的な受け止めの一方、《初耳》《聞いたことがない》との声があった。

 「広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶ」。ホームページで同賞は意義をこう強調するが、近年は選出された言葉が物議を醸すケースが目立つ。国会審議での加藤勝信厚生労働相(当時)の答弁を指す「ご飯論法」(平成30年)、「保育園落ちた日本死ね」(28年)、「アベ政治を許さない」(27年)。これらがトップテン入りした際は、賞の政治的中立を疑う声も上がった。

 こうした点を賞の事務局担当者は「『あの年にあんなことがあった』と思えるような言葉を、委員がバランスよく選んでいる」と反論する。

 情報源の多様化

 年間大賞の選考をめぐり、委員の発言が注目を集めたこともあった。

 かつて委員を務めた鳥越俊太郎氏が28年、出演したテレビ番組で「受賞者が表彰式に出席できず、大賞となる言葉を変更した」などと言及し、複数のメディアが報じた。これについて賞事務局は「受賞者が表彰式に出席しないというケースは過去にもある。出席が大賞の条件ではない」と否定している。

 新潟青陵大大学院の碓井真史(うすいまふみ)教授(社会心理学)は「国民全員が知っている流行が減り、情報源が多様化した今、その差はさらに大きくなっている」と指摘。その上で「時代に合わせるのであれば、分野や世代別に発表するなどの手もある」と述べた。

 また、「さとり世代」などの流行語で知られるマーケティングアナリストの原田曜平氏は、賞の影響力の大きさを認める一方、「委員には流行に詳しい専門家はおらず、首をかしげざるを得ない言葉も選ばれている」。さらに「いろいろな年代や業種の人を委員に入れたり、インターネット投票で決定したりするなども必要ではないか」とした。

 ちなみに昨年の年間大賞は「ONE TEAM(ワンチーム)」。どれほどの人の記憶にあるだろうか。

タイトルとURLをコピーしました