本当に沖縄県民は鳩山首相を辞めさせたいのか

 スッタモンダした普天間移設問題は、代替施設を名護市辺野古周辺に建設、具体的な場所や工法は先送りすることで、時間稼ぎすることになりそうだ。鳩山首相は23日、こうした方針を沖縄県の仲井真知事や地元首長に表明、理解を求めたが、「極めて遺憾で、極めて厳しい」(仲井真知事)という反発の声が相次いだ。野党や大マスコミはさっそく、鳩山の政治責任を追及しているが、ちょっと待って欲しい。確かに、この間の迷走は情けないが、自民党案よりも沖縄の負担を増大させるわけではないのである。それなのに、極悪人のごとく叩かれ、辞任を迫られる鳩山政権――。沖縄県民の心を政争の道具にしているのは誰なのか。
●メディアが“作った”県民の怒り
「沖縄差別だ」「絶対許さない」
 名護市を訪れた鳩山首相を待ち受けていたのは、こうしたプラカードと「出て行け」「辞めろ」というシュプレヒコールだった。
 大マスコミはこれぞ、「沖縄県民の怒り」と報じているが、これには大きな疑問符がつく。
 辺野古案に対する反対運動を続けている住民グループは今年2月、報道機関向けの意見表明文を公表した。そこに書かれていたのは、こういうことだ。
〈新聞の社説などが、基地問題の先送りが日米同盟を揺るがすとの理由で一刻も早く辺野古沿岸域案を確定するべきと主張するのはおかしい〉〈日米両政府間で13年間も協議して現行案が定まったのだから、今さら議論は無用という論調はない〉(要約)
 要するに、結論はどうあれ、現行案見直しに取り組んでいた鳩山の姿勢は、沖縄県民から「評価」されてきたのである。4月の県民大会の司会を務めた宜野湾市出身のミュージシャン、KEN子さん(35)もこう言う。
「前政権下では県民は基地問題を話題にすることもできなかった。それが政権交代で『基地反対って言ってもいいの』という雰囲気に変わってきた。これだけでも大きな前進なのに、そういう県民の思いは報じられません。『普天間を国外・県外に』という趣旨で開かれた県民大会が『民主潰し』のように利用され、鳩山首相の来県時に感極まって泣いた私の姿も『泣いて抗議する県民』という扱いで報道されました。内地メディアは鳩山首相に対する否定的な意見だけを取り上げ、それ以外は一切報じない。県民は鳩山潰しを誰も望んでいません。内地メディアには『怒りを利用するな』と言いたいのです」
 鳩山はメディアや野党の責任追及にひるむことなく、沖縄県民と真摯(しんし)に向き合い、基地負担の軽減を目指せばいい。基地問題なんかに関わらず、フタをしておけばよかったなどという論調に屈したらダメだ。

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