杉村惇美術館 来月開館1年

◎目指すは地域芸術拠点/地元への浸透が課題

洋画家杉村惇氏(1907~2001年)の作品を集めた塩釜市杉村惇美術館がオープンし て、11月で1年になる。塩釜にゆかりの深い杉村氏の作品を調査研究するほか、美術館が入る市公民館本町分室の建築的価値を引き出し、多彩なプログラムを 展開する。文化の発信地として交流人口の拡大に貢献しているが、住民の認知度はいまひとつ。地元に親しまれ、愛される施設になるかどうかが、2年目以降の 課題だ。(塩釜支局・山野公寛)

<市文化財を活用>
JR仙石線本塩釜駅から本町通りを経て徒歩10分。階段を上ると、高台に美術館がある。眼下に市街地が広がる。
外壁に塩釜石が使われている建物は、昭和の雰囲気が漂う。1951年に建てられた市有形文化財の公民館を改装し、2014年11月に開館した。2階に杉村氏の作品23点を常設展示する。
1階の奥に進み、突き当たりのドアを押すと、大きな空間が現れた。アーチ形天井(高さ9.7メートル)の大講堂。窓ガラスから木漏れ日が差し込み、時代をさかのぼった感覚に包まれる。
大講堂の魅力をアピールしようと企画したのが、6月の「まちと 記憶と 映画館」。映画監督の岩井俊二さん(52)=仙台市出身=を迎え、映画の上映やコンサート、トークイベントを大講堂を舞台に実施。関東や関西、韓国からもファンが集まった。
美術館総括の高田彩さん(35)は「交流人口の拡大に貢献できたと思う」と手応えを語る。若手アーティスト支援プログラム、子ども向けワークショップも展 開。目指すのは、杉村作品の調査研究にとどまらず、芸術文化の発信地、コミュニティー活性化の場として地域に貢献する「アートセンター」だ。

<業界の評価高く>
市教委が期待する年間入館者数は1万人。現在、7~8割で推移する。業界の評価は高まっているが「市民からは『場所が分からない』と言われることもある」 (高田さん)と、地元に浸透していないのが悩みだ。本田幹枝生涯学習課長は「住民が誇りを持つような施設になってほしい」と語る。
地域との関わりを深める仕掛けとして、ガイドなどを担うサポーターの養成に着手した。子ども向け絵画コンクールも計画するなど、美術館は理想する施設への道筋を描く。
岩井監督は6月のイベントで、取材に「塩釜で活動を持続するのは大変。逆に一つの流れになったら面白い」と話し、地方の市民生活にアートが根付くことに期待を寄せた。

<メモ>指定管理者はギャラリー「ビルド・フルーガス」(塩釜市)。開館1周年記念として、杉村惇氏のスケッチ作品を紹介する特別展を11月21日~来年1月24日に開催する。月曜と祝日の翌日が定休。連絡先は022(362)2555。

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