村井嘉浩宮城県知事は26日、仙台市内で開かれた立憲民主党の県連大会に初めて出席した。これまで自民党の県連大会には出席する一方、立民にはあいさつ文の送付などにとどめ、与野党に明確な差があった。突然の「方針転換」が、県政界に波紋を呼んでいる。
「立憲民主党が頑張ることで緊張感が生まれ、どちらが与党か野党かにかかわらず良い政治が行われる。これが国民、県民の期待だ」。立民の大会であいさつに立った村井知事は約200人の党員らと向き合い、満面の笑みを浮かべた。
異例の出席については「やっと呼ばれたので喜んで来た次第」と語ったが、立民県連事務局は「当然、これまでも案内は出している」と肩をすくめる。
県政トップはなぜ、出席に転じたのか。真意を巡って臆測が飛び交っている。
複数の政界関係者が挙げたのは、県が進める仙台医療圏4病院の再編構想だ。立民内には前向きな意見もあるものの、全体的には慎重姿勢が強い。
立民仙台市議は「反対勢力にあえて近寄るのがいかにも知事らしい」と警戒。村井知事は周囲に「病院再編は必ずやり遂げる」と語っており、融和ムードをつくる一環で出席したのでは、という説だ。
次期知事選への布石とみる向きも多い。
立民の大会には、旧民主党出身の郡和子仙台市長の姿もあった。自民ベテラン県議は「次の知事選で村井知事と渡り合えるとしたら郡市長ぐらい。立民による擁立を防ぐためのけん制ではないか」と分析する。
1週間前の19日、村井知事は市内で自民の県連大会に出席していた。「自民党は逆風になることをした。反省は当然だ」。あいさつで派閥政治資金パーティー裏金事件を念頭にとがめると、300人超の党員らからざわめきが起きた。
すかさず「宮城がここまで復興できたのは自民党のおかげ。私は県連幹事長も務めた。自民党を支え続けなければならない」とアピール、喝采を浴びた。
出身政党との親密さは変わらないようには見える。ただ、中央政界の風向きを案ずる声もある。
自民県連幹部は「政権交代した時の保険に見える」と不安げに語る。4月の衆院3補選で自民が全敗するなど政権の低迷を踏まえたとの見立てだ。
県政界の中心に立ち、常に視線を集める村井知事。立民大会後の取材に対し、今回の出席はあくまでも案内があったからだと繰り返した。「少なくとも私は(過去の案内について)確認を取っていない。案内をもらえれば毎年来る」と語った。