このところやけに地震が多い。東北、首都圏、関西、九州・鹿児島…と至る所で発生。2021年、震度5弱以上は10回を数えるが、そのうち5回が10月以降に起きた(12月21日時点)。来るべき巨大地震への警告なのか。ウェブ会員向けに「MEGA地震予測」を配信する地震科学探査機構(JESEA)では、今最も危険なゾーンとして3つの地域を挙げる。(海野慎介) 【イラスト】政府が公表した巨大地震の被害想定 ◇ JESEAでは、地上2万キロメートルを周回するGNSS(衛星測位システム)のデータを利用し、国土地理院が公表する全国約1300カ所の電子基準点で、どのような地殻変動が起きているかを観測している。 ①1週間ごとの上下方向の動きである「週間高さ変動」②長期的な上下方向の動きである「隆起」「沈降」③東西南北の「水平ベクトル」の動き。この3点を総合的に分析し、地震が起きる恐れのあるエリアを割り出している。 13年から20年にかけて、発生3~6カ月前までに地震の前兆をとらえたケースは実に76・9%に達する(JESEA調べ)。測量工学の世界的権威で、JESEA会長の村井俊治・東京大学名誉教授が、22年1月までに「かなり危ない」と指摘するのがここだ。
■東北・太平洋岸 「地震の常襲地帯」である東北地方では21年、震度5弱以上が4回発生した(12月21日時点)。引き続き、「最高度の警戒が必要」と村井氏は語る。 「太平洋側は東日本大震災の反動で『隆起』が続く一方、日本海側は『沈降』し、宮城県の『牡鹿』と山形県の『鶴岡』の基準点で16センチの高低差がある(12月1日時点)。いわば、奥羽山脈を中心とするそのエリアにひずみがたまっている。なかでも水平ベクトルが南東に引っ張られている太平洋岸は危ない」 山形県内では「沈降」が目立つが、「大蔵」「西川」「山形小国」では4センチ以上の週間高さ変動を確認(12月1日時点)。異常な状況が続いている。
■北信越 21年12月3日、山梨県東部・富士五湖でマグニチュード(M)4・8の地震を観測した。 JESEAでは、約3カ月前の9月8日、山梨県の「韮崎」などで6センチ以上の週間高さ変動をキャッチし、MEGA地震予測で注意喚起した。 「新潟県の糸魚川から静岡に至る『フォッサマグナ』(大地溝帯)に沿って異常変動が出ており、延長線上の富士五湖で地震が起きたと言える」 12月1日時点で、新潟県中越地方の「新潟大和」「高柳」「塩沢」「妙高高原」、石川県の「白峰」などで大きな週間高さ変動を確認。さらに長野の「白馬」で急激な高さ変動があり、南東方向への水平方向の動きも活発化しているという。 「新潟・長野県境では『隆起』『沈降』の高低差は6~7センチにもなる。警戒すべきエリアだ」
■九州・沖縄 鹿児島県のトカラ列島で21年12月4日以降、300回以上の揺れを観測。10月6日には同県大隅半島東方沖でM5・4の地震が起きた。 「ここ2カ月間、中国・四国地方など隣接地域に比べ、九州や南西諸島で水平方向の動きが強い。九州、南西諸島、沖縄一帯で『沈降』も続く。東日本大震災(11年)、熊本地震(16年)など『沈降』後に大地震が起きたという経験則がある。全体の『沈降』に対し、阿蘇山や桜島周辺は局所的に『隆起』し、高低差によるひずみがたまっている」 最新の分析で村井氏は、北海道十勝地方も要警戒エリアに挙げた。いつ襲ってくるかわからない地震。〝備え〟だけは万全にしておきたい。