PRESIDENT Online 掲載
■最大手・すかいらーくも「100店舗閉鎖」を発表
わが国のファミレス業界に、厳しい受難の時代が到来しているようだ。帝国データバンクの緊急調査では、2023年3月末、主要16社の店舗数は2019年12月末から1000店舗以上減少すると予想されている。その背景要因として、新型コロナウイルスの感染再拡大の長期化、脱グローバル化によるインフレ圧力の高まりなどがある。
特に、ウクライナ危機の発生以降はコスト増加圧力が急速に高まった。8月12日には、すかいらーくホールディングスが約100店舗の閉鎖を発表した。同社はコストカットによって資金を捻出し、店舗の業態転換、店舗運営のデジタル化、“中食”需要の取り込みなどを強化している。ファミレス業界全体が、これまで以上に生き残りに必死だ。
見方を変えると、世界経済の環境変化が一段と激化し、わが国経済はより強い逆風に直面し始めた。これまで、世界経済が上向くとわが国の景気は緩やかに持ち直した。産業別に見ると、自動車や精密機械などが世界の需要を取り込んだ。雇用と所得環境は下支えされた。ファミレス企業はセントラルキッチンの運営体制を強化するなどし、総合的なメニューを提供して事業運営の効率性向上に取り組んだ。
しかし、ウクライナ危機の発生以降は世界全体でエネルギー資源や食料の供給量が減少し、企業の事業運営の効率性が低下している。過去30年間、わが国の賃金は伸び悩み、外食需要の増加は期待しづらい。ファミレスの店舗急減は、わが国経済の縮小均衡懸念の高まりを示唆する。
■感染の波が収束しても客が戻ってこない
帝国データバンクを見ると、2019年12月末時点でわが国のファミレス主要16社の店舗数は9230だった。その後、店舗数は右肩下がりで推移し、2021年9月末の店舗数は8593に減少した。その要因として2020年に入りわが国で新型コロナウイルスの感染が広がり、その後も感染再拡大が続いたことが大きい。
わが国には米国や中国のように有力なITプラットフォーマーが見当たらない。その分、感染再拡大による動線の寸断や不安定化が経済活動に与える負のインパクトは大きい。ファミレスを訪れる人は急減し、店舗の採算は悪化した。その状況下で収益を獲得するために、店舗を閉鎖して損益分岐点の引き下げに取り組む企業が増えた。感染再拡大が収束して移動制限が緩んだ後も、客足は元に戻らなかった。感染から身を守るために人との接触を避けなければならないという防衛本能の高まりなどがその要因と考えられる。