新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7月24日に開幕する東京五輪への影響が懸念されている。ウイルス感染爆発が五輪開催中の東京を襲ったら、選手だけでなく観客にも大きな影響を及ぼす恐れがある。
グローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師(輸入感染症)が指摘する。
「新型コロナウイルスのような感染症は、一定期間、限定された地域に大勢が集まる『マスギャザリング』と呼ばれる状況で拡大しやすい。世界中から1000万人を超える人々が集結する東京五輪は『マスギャザリング』の典型例で、感染者が増える条件が揃っている」
マスギャザリングとは、一定期間、限定された地域に大勢が集まることだ。選手や観客だけではない。東京五輪では5万人の警備員と8万人のボランティアが大会運営に携わる予定だ。それとは別に会場周辺や駅などで案内役を担う都市ボランティアとして東京都は2万人を確保している。
「ボランティアは多めの人数を確保していますが、感染爆発によってこれらの人員から大量の辞退者が生じる可能性もあるでしょう。
そうなれば、会場の座席案内などの大会運営がスムーズに行かないだけでなく、地震などの災害時の避難誘導ができなくなる。パニックによる観客同士のトラブルも起こり得る。そうした想定がなされているのか疑問が残ります」(スポーツ紙五輪担当デスク)
◆キャンセル続出の「宿泊業」は大赤字
新型コロナウイルスの拡大を受け、中国政府は春節(旧正月)期間の途中から「団体旅行客の渡航禁止」を決定した。感染を防ぐための措置とはいえ、宿泊業ではキャンセルが相次いだ。
五輪期間中は「ホテル不足」が叫ばれており、みずほ総研の試算によれば、最大で1万3700室程度の客室が不足するという。
「逆にいえば、感染拡大時にキャンセルが続出すれば、それだけ宿泊業への打撃は大きくなります」(前出・スポーツ紙五輪担当デスク)
◆ホストタウンが抱える不安
感染爆発の影響は、東京にとどまらない。東京五輪では、参加国との交流を図る「ホストタウン」が全国に登録されている。東京都の元職員として五輪の招致活動の推進担当課長を務めた経験を持つ、国士舘大学客員教授の鈴木知幸氏が語る。
「ホストタウンは47都道府県、478の自治体に及ぶので、海外からの選手・観光客が訪れるのは、東京や競技会場周辺だけとは限りません。海外で感染が拡大した場合、その国を受け入れるホストタウンには動揺が懸念されます。逆に、ウイルスの流行でホストタウンへの訪問を見送る国が出てくれば、受け入れを進めてきた自治体の施設や宿泊業などに影響が出ることになりかねない」