東京五輪は無観客開催が濃厚 訪日客狙いの百貨店が迫られる「待ったなしの変革」

東京五輪は中止にならなくとも無観客開催が濃厚となってきた。大手百貨店関係者は、「新型コロナの感染拡大は止まらないし、仕方のない判断だと思います。ただ、訪日客を当て込んだビジネスは不可能になります。店舗改装の費用は回収できず、この先どうなるか……」と肩を落とす。

 数年前から中国人による爆買いがブームとなり、百貨店は一息ついた。それがコロナ禍で消え去り、期待した五輪も不発となれば百貨店の売り上げは落ち込むばかりだ。

 今月1日に発表された大手の2月度売上高(既存店ベース、速報値)は前年に比べ大きく落ち込んでいる。落ち込み幅は、そごう・西武が11・0%、J・フロントリテイリング(傘下に大丸と松坂屋)は10・7%、三越伊勢丹HDは8・0%、高島屋が5・5%だった。

 2度目となる緊急事態宣言が発令され、外出自粛要請は長期化。春物スーツなど主力の衣料品が低迷した。バレンタイン商戦などでテコ入れを図ったが、カバーしきれなかったという。

■半世紀ぶりに店舗数は200割れ

 2月末に閉店した百貨店もある。1994年に開業し地元民に愛されてきた三越恵比寿店と、そごう川口店だ。昨年は、山形県の大沼、福島県の中合といった老舗百貨店も閉店した。日本百貨店協会によると、全国の店舗数は半世紀ぶりに200店を割り込んでいる。

 そんななか、経産省は地方を中心に苦境にあえぐ百貨店の再生策を議論する研究会(座長・伊藤元重学習院大教授)の初会合(2日)を開いた。夏をメドに提言をとりまとめ、流通関連政策に反映させる。経産省の畠山陽二郎商務・サービス審議官は、「百貨店は待ったなしの変革が必要だ」と議論を呼びかけた。

 百貨店は、高度成長期を通じて豊かになった日本の消費文化を支えたと評価される一方、1990年代のバブル崩壊を機に売り上げの減少傾向が続く。近年は郊外の大型商業施設やネット通販の台頭に加え、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛が三重苦となり、閉店ラッシュの波が地方から都市圏に及び始めている。

 研究会では少子高齢化に伴う人手不足、食品ロス削減といった社会的な課題にも対応できる百貨店再生策について討議。商品需要の多様化を踏まえ、ITを活用した調達・販売の効率化、働き方改革を支える営業時間・休日の拡充などが課題に挙がった。

 議論には公正取引委員会も参加。物流・在庫管理などコストがかさむ分野で、競合百貨店同士が独禁法に抵触しない範囲で協力できる方策も話し合う。

 研究会で出席者のひとりは、従来のインバウンド(訪日外国人旅行者)増加が逆に業界の構造改革停滞の一因になったと指摘。「新型コロナウイルス禍を機に、ビジネスの在り方を見直すべきだ」と訴えた。

 百貨店は変革できるか。

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