東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、東京地裁(安永健次裁判長)は11日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われた法人としての博報堂に求刑通り罰金2億円の判決を言い渡した。談合は大規模なもので「公正かつ自由な競争を阻害した程度が大きい」と指摘した。事件で企業側の判決が出るのは初めて。
同じく同罪に問われたグループ会社の博報堂DYスポーツマーケティング元社長、横溝健一郎被告(57)には懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。ともに公判で無罪を主張していた。
事件では、最大手の電通グループをはじめとする広告会社やイベント会社など6社と各社の担当者6人、大会組織委員会元次長=同罪で執行猶予付き有罪判決が確定=が起訴された。
検察側は組織委が発注した①テスト大会の計画立案業務(競争入札)②テスト大会の実施業務(随意契約)③本大会の運営業務(随意契約)――で受注調整が行われていたとしている。受注金額は計約437億円にのぼるとされる。
判決では、組織委元次長と電通が主導し、競技会場ごとに落札企業を割り振っていたと指摘。当時博報堂の担当部局幹部だった横溝元社長も「競争を実質的に制限すると認識していたことは明らかだ」と認定した。
随意契約分に関しては「(企業側は)テスト大会業務を受注した事業者が本大会業務を受注するのが合理的であると考えていた」とも言及。一連の契約すべてが受注調整の対象だったとし、「社員として博報堂の利益を図るためとはいえ、安易な選択と言わざるをえず、非難は免れない」と指弾した。
公判で博報堂と横溝元社長は、組織委に希望する競技を伝達したり、他社と連絡を取り合ったりした事実は認める一方、「受注調整をする認識はなかった」として無罪を主張していた。希望した競技以外の入札にも参加し、落札企業の半値で応札した会場もあったとも訴えていた。
判決によると、横溝元社長は組織委元次長らと共謀し、2018年2〜7月に組織委が発注したテスト大会の計画立案業務などに関し、受注調整して競争を制限した。
判決を受け、博報堂は「本日の判決の内容を精査し、対応を検討する」とのコメントを出した。
事件で起訴された6社で、すべての業務で受注調整があったと認めた企業はない。電通と東急エージェンシーはテスト大会計画立案業務に関する起訴内容だけ認め、残る本大会運営など随意契約分は「不当な取引制限にあたらない」と否認している。
イベント会社のセレスポなど残りの3社はすべての業務について起訴内容を否認し、全面無罪を訴えている。