東北、コロナ第7波の兆し 近づく大型連休、各県危機感

東北で新型コロナウイルスの新規感染者数が高止まりし、流行「第7波」の兆しを見せている。第6波と同様に若者の感染者割合が増え、保育施設などでのクラスター(感染者集団)が多発。新規感染が過去最多を更新する県も相次ぐ。人出増が見込まれる大型連休を前に各県の懸念は募る。

 東北6県の新規感染者数の推移はグラフの通り。3月下旬から増加基調にある。

 今月10日が期限だった「再拡大防止期間」を5月15日まで延長した宮城県は、1日の新規感染者数が3月最終週以降、前週の同じ曜日を上回る日が増えた。担当者は「年度替わりの人の移動が感染増につながった」と警戒感を示す。

「BA・2」に置き換わり

  福島県は7日の新規感染が過去最多の694人に上った。3月下旬~4月初旬の感染者の抽出調査では、感染力の強いオミクロン株の派生型「BA・2」の割合が約4割で、置き換わりが進む。担当者は「再拡大が始まった」と捉える。

 感染を比較的抑えてきた岩手県も13日、過去最多の431人を記録。担当者は「保育園や幼稚園に加え、職場やスポーツ活動のクラスターが増えた。BA・2は感染スピードが速く、濃厚接触者を囲い込めない」と対策の難しさを挙げる。

 青森県は1週間(2~8日)の10万人当たり新規感染者数が255・7人で東北最多となったが、重症化リスクが低いとされるオミクロン株の特徴を重視。感染状況の分類を見直し、6日にレベル3(対策強化)から2(警戒強化)に引き下げた。

 11日には北海道と北東北3県の住民向け宿泊割引キャンペーンも再開し、対象に宮城、山形両県民を追加した。青森県の担当者は「新規感染の割合は10代以下が多い」と強調。部活動の制限や県内の全保育所への抗原検査キット配布などで感染拡大を防ぐ構えだ。

 12日に過去最多の445人となった秋田県の担当者は、花見などの観光シーズン本番を前に「人の動きに注意しつつ、基本的な感染防止の徹底を呼びかける」と気を引き締める。

 国が11日公表した新型コロナワクチンの3回目接種率で、山形県は50・4%と東北トップ。ただ、20代の接種率は26・0%にとどまり、新規感染の約半数を20代以下が占める。担当者は若者を中心に「ワクチン接種に加え、3密回避など基本的対策を求めたい」と話す。

対策アップデートを 東北大院・小坂健教授に聞く

 流行「第7波」の兆しが見られ、東北でも高止まり傾向にある新型コロナウイルスの新規感染。厚生労働省クラスター対策班の小坂健・東北大大学院歯学研究科教授(公衆衛生学)に今後の見通しや対策を講じる上での注意点を聞いた。

 オミクロン株の従来型「BA・1」から派生した「BA・2」は喉などの上気道で増殖しやすい。重症化は少ないが、感染力はBA・1より2割ほど高い。国内でも今月中にはBA・2への置き換わりが進むだろう。

 より感染性の高いBA・2派生型「XE」も国内で初確認されたが、感染拡大は株の違いよりも人の移動などの影響が大きい。東北での直近の感染拡大傾向も年度末の異動期と重なったためだろう。オミクロン株の症状は喉の痛みや頭痛などが多いとされ、軽い症状でも検査を受けたり学校や職場を休んだりする勇気を持ってほしい。

 感染経路も、接触感染より空気中に漂うウイルスを含む微粒子を吸い込む「エアロゾル感染」が主体であることが認知されてきた。一方、飲食店など市中の感染対策は今もアルコール消毒や座席間のパーティション設置が主流で、換気は不十分だ。対策への意識もアップデートが必要。常時排気する方策を進めてほしい。

 花見など行楽の機会が増えるが、少人数で屋外なら問題ない。人との接触機会が増えると感染が広がる可能性が高いが、自粛一辺倒やゼロリスクの発想でなく、リスクを減らしつつ楽しむ方法や、連休後は1週間オンラインで対応するなど、職場や学校に持ち込まない方法を考えるべきだ。

 コロナ下で自殺者が男女とも増えた。経済的要因だけでなく交流機会の減少なども要因とみられる。「正しく恐れる」という姿勢でコロナに向き合い、リスクを減らしながら社会を回すことが求められる。

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