東北、猛暑でも海水浴場冷え冷え

東北の海水浴場で、監視員らの人手不足で開設できなかったり、利用者の減少で採算が厳しくなったりしているケースが出ている。砂浜の減少やレジャー意識の変化といった事情も逆風となる。若年層の「海離れ」が加速化する中、夏のにぎわいがしぼんできている。

「ここは海水浴場ではありません。遊泳禁止です」
クラゲの展示で人気の鶴岡市加茂水族館に隣接し、家族連れでにぎわう同市の人工海岸「加茂レインボービーチ」。8月上旬、酒田海上保安部や鶴岡署が注意を呼び掛けた。
ビーチは2002年の完成後、海水浴場を毎年開いてきたが今シーズンは断念した。監視員と看護師を確保できなかったためだ。
海水浴場を運営してきた加茂地区自治振興会の田中正志会長は「看護師は介護施設などに押さえられ、監視員も短期雇用では来てもらいにくい。地方の人手不足の影響だ」と言う。

<赤字続きで閉鎖も>
東北の海水浴場利用者の減少は深刻だ。国の統計によると、東日本大震災の影響が比較的少なかった東北各県の17年度の海水浴場利用者数は、青森43万人(07年度比30万人減)秋田25万人(同13万人減)山形51万人(同19万人減)となっている。
関係者によると、多くの海水浴場は駐車料金が収入の柱。利用者の減少は収支悪化に直結する。
山形県内では09年、酒田市の十里塚海水浴場が赤字運営が解消されないとして閉鎖された。08年までの10年間に利用者数が4分の1に減少。砂浜の浸食で一部で水深が深くなり、危険性が高まったことも一因だったという。
十里塚自治会の高橋政幸会長は「再開を求める声はあるが、事故の責任などを考えると、危ないことはできない」と話す。

<レジャー意識変化>
海を巡るレジャー意識の変化も顕著だ。日本財団の17年の調査では、全世代で4割が海に入ることが嫌いだと回答。10代が海水浴に行かない最大の理由は「海で泳ぐこと自体が好きではない」だった。酒田市の宮海海水浴場実行委員会の佐藤剛委員長も「若い親の利用が減っている」と実感を込める。
東北で利用者が最多の鶴岡市湯野浜海水浴場を運営する湯野浜温泉観光協会の佐藤航副会長は「海と白浜、温泉をリンクさせてブランド力を高めることが大切だ。シーカヤックや(ベルト状のラインの上を歩く)スラックラインで遊べるなど、海に入らなくても楽しめる工夫も強化している」と話す。

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